みなさまこんにちは。大人気コーナー(?)「劇団インタビュー」のお時間です。

ところで、インタビュアーの私は、元来とんでもない人見知りです。

インタビューをするお相手はだいたい、そんな長いことしゃべったことない方ばかりです。
何なら生でお会いするの初めてな方もいらっしゃいます。
劇場で舞台に立っているところを拝見したとか、そんなレベル。

だからインタビューが決まると毎回めちゃくちゃ憂鬱なんですよ(本音)
でも、その人のことを調べて調べて、実際に会ってだいたい30分~1時間ぐらい会話をする。

まあ好きになりますよね。
だってみんな演劇大好きなんですもん。
そしてみんなお話めっちゃ上手なんですもん。

たーのしー!!

そんなこんなで今回も始めさせていただきます。

 

■劇団突撃インタビューって?

【観劇三昧】とつながりが深い、噂の「あの人」に観劇三昧が突撃インタビューします!

俳優/脚本・演出家/劇団代表など、普段は舞台の上でしか見ることができないあの人の、

なかなか聞けない本音や裏話、演劇に対する想いを存分に語っていただきます。

これを読めばもっと劇団が好きになるかも?知らない劇団なら、知るきっかけになるかも?

そんな、日常にちょっとしたワクワクをお届けする新コーナーです。

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本日のお相手は…

アマヤドリ 広田淳一さん!!

 

■広田淳一(ひろた・じゅんいち)
1978 年生まれ、東京都出身。
CRG ( Creative Guardian )所属。
2001 年、東京大学在学中に「ひょっとこ乱舞」を旗揚げ。
以降現「アマヤドリ」に至るまで全作品において脚本・演出を担当。
<主な受賞歴>
日本演出者協会主催 若手演出家コンクール 2004 最優秀演出家賞(2004 年/『無題のム』)
佐藤佐吉賞 最優秀演出賞・優秀作品賞(2005 年/『旅がはてしない』)
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Twitter:@binirock
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■アマヤドリ
2001 年に「ひょっとこ乱舞」として結成。
2011 年に「大爆破」と銘打って脱皮を遂げ、2012 年に「アマヤドリ」へと改称して再スタ
ートを切った。
現代口語から散文詩まで扱う「変幻自在の劇言語」と、共感性と個別化を主眼とした「自由
自在の身体性」を活動の両輪とし、
リズムとスピード・論理と情熱・悪意とアイロニー、とか、そういったものを縦横に駆使し
て「秩序立てられたカオス」としての舞台表現を追求している。
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HP:http://amayadori.co.jp/
Twitter:@amayadorix
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演劇を始めたキッカケは?

 

ー広田さんの過去のインタビュー記事で見た感じでは高校までは演劇をやってらっしゃらなかったんですよね?

広田淳一さん(以下広田):全くやってなかったですね。やってもないし観てもない。親も全然演劇を観る習慣がなくて、映画すらあんまり見なかったんです。

ーそうなんですね。

広田:全然演劇には触れずに生きてきましたね。だから急に始めた感じですね。

ー大学の何年生の時に始められたんですか?何かキッカケが?

広田:1年ですね。最初大学入って、何だかよく分かんないけど、最初バンドサークルに入って…
でもまぁ何か文化的なことがやりたかったんですよね。文芸とかに興味があったんで…だけど家で1人で小説書いてるんじゃ、人とあまりに会わないなって。

ー小説書くところから入られたんですか?

広田:小説、というか…「何か」書きたいなって思いがあって…ですね。

ーなるほど。1人で作品というか物語を起こしながら、それを使って人と関わりを持ちたいな、と思われた感じですか?

広田:そうですね。

ー高校生まではスポーツをやってらっしゃったんですか?

広田:そうですよ。ハンドボールしかやっていませんでした。

ーアマヤドリには身体表現と呼ばれる動きが多いですけど、ハンドボールなどのスポーツ経験というのは、生かされてたりするのでしょうか?

広田:確実に生かされてますね。

ーへぇ!

広田:これは俳優さんを見てて思う事ですけど、やっぱり劇場って、単純に「広い」じゃないですか。

ーそうですね。

広田:日本人は、あんな広い空間で暮らしてないんですよ。

ー確かに!

広田:すっごい狭いところで生きてるんで、だから舞台に立っても、たぶんその子の脳があの大きさの空間を把握出来ないんですよね。だけどサッカーやってた人とか、バスケやってた人は、大きい空間っていうモノが頭に入ってるんです。だから全然違いますねやっぱり。それが分かんない人には、中々口で言っても伝わらないので…ちょっと時間が掛かるところですけど。

ーそうですね、確かに、特にチームでするスポーツ空間ってかなり広いですもんね。

広田:ああいう空間で、人は生きてないんですよね!

ーあはは(笑)

広田:最初、演劇始めた時はホントにそんな感じで。だから何か演劇作品を観て面白くてっていう…客席側からの感情で始めた人間じゃないんですよ。

ーなるほど。

広田:だから、そういう人とは違うなっていうのは思いますね。「演劇はおもしろい!」みたいなところから始めた訳じゃなくて最初からやる側だったんで…なんかちょっと、そういうタイプの人と違うんだろうな、とは思いますね。

ー演劇を始めて一番初めに観た作品ってなんだったんですか?

広田:最初にお金払って観たのは、遊◎機械/全自動シアターの…青山円形劇場でやってた…なんていうタイトルだったかな!?忘れちゃったんですけど(※食卓(テーブル)の木の下で?)、5~6人の小さいサイズのお芝居で、白井さんと高泉さんがガッツリ絡む話で、2人のあまりの芝居の上手さにちょっと…絶望的な…というか、あれは衝撃的でしたね。ホントに2人が上手くて!

※遊◎機械/全自動シアター(1983~2002) 早稲田大学演劇研究会出身の白井晃、高泉淳子、吉澤耕一を中心に結成。

ーへぇ!

広田:高泉さんが、8歳ぐらいの少女時代と、若い娘時代と、おばちゃん…中年、熟女的な歳になってからの3個の世代を行き来する、みたいなお話で、演じ分けがもう!白井さんとお2人でやられるんですけど見事で!いや、なんちゅうこっちゃ!と思って。それで俳優の力の凄さを思い知りました。
若い頃は少女っぽい衣装で出て来て、だんだん年齢が変わるにつれ衣装も変わっていくんですけど、おばさん・おじさんになってから、一瞬、少女・少年時代に戻るんです。その時は着替えとかはなくて、舞台上で「スッ」って戻るんですよ。
その瞬間に、「戻った」ってことが分かるんですよ!いや、これは凄いことだな、と思って。

ー俳優力…!

広田:そう、俳優力を感じるお芝居でしたね。まぁ円形の劇場だったっていうのもあって、衣装やメイクのビジュアルでじゃなく、ホントに俳優の身体でこれだけ魅せられるんだっていうのは最初にすごくビックリしたことでしたね。
でも…最初のころは全然わからなかったです。ほら、お芝居って学生にとっては高いじゃないですか!「観劇三昧」なんてその頃はなかったですし、TSUTAYAでVHSを借りて、演劇って何だろうとか言って遊眠社※のビデオとかよく見ましたね。そんなに数がなかったから、限られてましたね。

※夢の遊眠社(1976年~1992年)野田秀樹主宰。

ー学生さんじゃ特に、なんでもかんでも観に行けないですもんね。

広田:そうなんですよ。行きたい気持ちはあったんですけど、そんなにお金がある訳でもないし。だから熱心に観劇をしたというよりは、とにかく自分でやってみてました。ビデオで見たりとかぐらいかなぁ。
だから遊眠社は影響受けてるんじゃないですかね。当時はワケ分かんなかったですけど。

ー(笑)

広田:でもやっぱり野田さんがやっぱり役者として凄すぎて…。

ーなるほど。

広田:当時はTSUTAYAの品揃えもあんまり多くなくて。維新派さんとかも観てましたね。「何だこれは」と思いながら。

ーお芝居を始めたてのころに観ようと思うと、結構レベル高い気もしますね。

広田:レベルは高かったですけど、でも楽しかったですね。その後、生でも維新派さんは何度か観てますね…アマハラも観ましたしね。

ー奈良まで観に行かれたんですか?

広田:行かれたんですよ!あれは、すごかった!感動してしまいました。友人と一緒に観て、彼には合わなかったらしいんですが僕は隣で大感動してて、「これが分からないなんて残念な人だ」とか言ってて(笑)
でもある程度、人を選ぶ作風ではあるのかもしれない。

ーそうですね、好みは分かれますね。

広田:好きな人は、たまらないでしょう。アマハラはもう特に、松本さんが亡くなっているということも含め…あとあの会場、平城京跡でやっていること、スケール感も含めて…すごかったですね。

観劇三昧で配信もしてますよ!

広田:そうなんですか!?あれの配信とか大変でしょうね、中々あの空気感というか…巨大過ぎて!

ーそうですね!私もアマハラは観ました。生で観た感動はもちろんですが、映像作品としてもすごく良いなとは思いますね。

広田:なんというか、別物にならざるを得ないですよね。あのスケールは中々…

ー舞台作品というか!維新派は維新派っていうジャンルだな、と思いました。

広田:いやー!ホントにそうですよねアマハラは特に。

 

観劇三昧で配信してるアマヤドリ作品の中で一番観てほしい作品

広田:これは、「月の剥がれる(2016年再演版)」ですね。
長いんですけどね、3時間近くあるから…ちょっと…あと話も重いし、登場人物も多くてごちゃごちゃしてるんです。

ー確か30人ぐらい出てますよね?

広田:そうそう、これ自分で書いた作品では一番登場人物多いんじゃないですかね。

 

「月の剥がれる(2016年再演版)」

 

ーなるほど。初演の時から多かったんですか?

広田:多かったです!

ーおお。

広田:初演のとき、書きながら嫌になってましたからね(笑)いや、大変でした、全然台本が上がらなくて。
書けないんじゃなくて、30人もいるから30人ぶん書こうと思ったら、物凄い長さの芝居になっちゃって、それをまとめられなくて苦戦したんです。結局上演初日までまとめられなくて、怒られたのを覚えてます。

ーええ!

広田:劇場の退館時間を過ぎるぐらいの長さになっちゃって、「ダメだから!こんな長いのやっちゃ!退館はちゃんとして」みたいな

ー(笑)

広田:だから、初日から2日目、3日目ぐらいで30分ぐらいガツガツ切りましたね。

ーえ!!公演中に短くなっていったんですか!

広田:なんかあの時は異常だった…(笑)初演は初演で好きなんですけど、わちゃわちゃしてたのを再演版はもうある程度原型があったんで、そこから改めてまとめて、台本もかなり書き直して整理出来たんで、割とやり切った感がある感じですね。

ー完成した感じですね。

広田:なんかちょっとね、まぁでも再演の時も同じ時間の問題にぶつかるっていう愚を犯したんですけどね(笑)
また上演時間が長すぎて、19:30開演の時はこの上演時間じゃ収まらないです、ってなっちゃって。

ー19:30から3時間は長いですね。

広田:で、何シーンかカットしたバージョンでやったんです。でもやっぱり、ホントは完全版でやりたかったから、19:30開演の最後の回が終わった後で、2シーンぐらい復活させて…だから最後の何日かだけディレクターズカット版みたいになってたんですよ。配信している映像は完全版ですから、その分長いんですけど。

ーなるほど!ここでは全編観れるよっていうことですね。

広田:そうですね、これは余すところなくアマヤドリしてるんじゃないですかね。

ーそんな事があったんですね!

広田:これは群舞もやり切ってる感ありますし…群舞はすごい大変なんですけど。

ー30人の群舞は大変ですよね。

広田:人数が多いっていうのもそうですし、単純に辛いんですよ。この時の群舞は辛いダンスだったんです。

ーつらい?

広田:この間、BATIK※を観に行ったときにトークで黒田さんが「ダンスっていうのは、体の限界が来るからあんまり長い日数やれない」みたいなことをおっしゃってて…
僕らの群舞は、もちろんBATIKさんみたいに踊れるわけないんですけど…とはいえやっぱり公演は長いから大変でした。そういう意味では限界に挑戦している作品なんで

※BATIK(2002~)黒田育代主宰・振付のダンスカンパニー

「月の剥がれる(2016年再演版)」は10日ぐらいでしたかね。

広田:そうですね。

ー『青いポスト』/『崩れる』の時は1か月でしたもんね。

広田:そうですそうです!あの時は5週間ぐらいやっていましたからね。あれは今までやった中で1番長いんじゃないですかね。

ーなるほど。

広田:あれも大変でした!再演物と初演物をくっ付けて2本立てっていうのは何度かやってたんですけど、『青いポスト』/『崩れる』は2本とも完全新作だったので。

ーそうですよね、凄いことするなって思ってました。

広田:それが当たり前ですけど大変で。あれもよくやれたなって思ってますけど…でもまぁこれはまだ配信してないですからね!オススメとしては「月の剥がれる(2016年再演版)」、あとは「ロクな死にかた」(風姿花伝版)もいいんじゃですかね。「ロクな死にかた」は初演よりこっちの方が台本的にはスッキリしてるんで、いいと思います。

ー「ロクな死にかた」で大阪に来られたときに初めてアマヤドリを生で観たんですよ。

広田:インディペンデントシアター1stでやったやつですよね?
あの時も大変だった!僕ら的には、あっちこっちツアーした中で、1stが一番小さい会場で、ダンスが収まらなくてね、みんながケガする寸前みたいなとこでした…だからすごい縮小して。

ーへぇ!

広田:1stがツアーの最初だったら、全然そんなことなかったんですけど、大きいところでやってみんな身体とか感覚が慣れちゃったから大変でしたね。

ーまた関西に来られるのを楽しみにしてます。

 

 

 

自分の作品に一番影響を与えた人、作品は?

広田:最初に誰々のお芝居を観て感動して始めた的な始め方じゃないので、そういう意味ではそんな誰かに決定的に影響を受けたっていうこともないんでしょうけど…良くも悪くも僕、誰の下についてやった経験がないので、師匠筋にあたる人っていうのが全然いないんですよ。

ー最近では結構珍しいパターンかもしれないですね。

広田:とは言ったってもちろん色んな方にお世話になってるんですけど。

ーダンスの群舞ってなにかルーツがあるんですか?

広田:何なんでしょうね、うちのってインド映画みたいですからね。急に最後踊るんだ、みたいな

ーインド映画!(笑)

広田:別に特に踊ることへのエクスキューズは有ったり無かったりです…うーん、山の手事情社※さんから来てるんじゃないですか。勝手に言ってるんですけど(笑)
山の手事情社さんもルパムっていう…僕らのやってるような群舞とはまた全然違うんですけど、独特の身体的な…簡単に言ってしまえば創作的なダンス部分があるんです。そういうのを観てて結構好きで。とかっていうのもあったんでしょうけど…

※劇団 山の手事情社(1984~)安田雅弘主宰

ー言われてみればそうかな、っていうところですかね(笑)

広田:みたいな…どこから来てるんでしょうね。動くのが好きだったからっていうのはあるんでしょうね。いわゆるダンス経験とか僕、全くないので、うちの劇団員にダンス経験がある奴がいた訳でもないんですよ。
でもダンサーが作りそうなダンスになる事を拒否して群舞は作ってきましたね、多分。

ーへー、なるほど。

広田:梅棒の伊藤今人くんとか、外山晴菜ちゃんCHAiroiPLINのスズキ拓朗さん…色々ダンスに素養のある人にお世話になりながら作ってる部分っていうのは多々あるんですけど…多分手伝ってくださった方は僕らのこだわりもよく分かってくれてたんで…
ダンサーさんは色々作るのが早いんです。だけど僕らが役者で作ると、何も分かってないから何倍っていうか下手したら何十倍も時間が掛かるんですけど、良い意味で歪むんですよ。

ーということは、ダンサーさんが振り付けたりじゃないんですよね。

広田:じゃ、ないですね。いつも役者がやってますね。だからこの間抜けた笠井(笠井里美さん)とかはかなり中心的に群舞を作ってくれてましたけど、彼女が入る前からやってたし、『青いポスト』/『崩れる』のときにはいませんでしたが群舞はあったので。

ーみんなで作っていってるんですか?

広田:それに近いですね。
もちろん、その時に責任を持ってやる人間っていうのはいるんです。この間は一川幸恵っていう子がやってくれたんですけど、でもそうですね、結構全体でやります。

ー何となく私、ダンスって誰か振付師がいてて、その人に従ってやっていく、みたいなイメージがあるんですけど。

広田:そうじゃないんですよ。

ーじゃぁ劇団員の誰かが、まずは中心になって考えたのをみんなでこね回していくみたいな感じですか?

広田:そんな感じですね。あとは、僕も口出したりもしますね。

ーなんかこう、それぞれがみんなアマヤドリイズムを持ってるみたいな。

広田:良く言えばそうです、あと僕らが身体でやってきたことって言うのが続いてることがあるので、その辺なんでしょうね。

ーへー!素敵ですね!おもしろい!めっちゃ稽古風景見てみたいです!

広田:でもまぁ…効率悪いですよ(笑)

ーめっちゃ仲良くなりそうですけどね!

広田:あー…どうなんでしょうね?僕らは…まあ仲良いんでしょうけどね。
でもね最近ね、そうでもないのかもしれない。多分、劇作家協会とか演出家協会とかで、上の世代の先輩ともお話することがあると、全体的に「繋がり」が浅いんですよ。

ー劇団員同士がってことですか?

広田:て言うか、今の感覚からすると昔の人達っておかしいですから!だって、寺山さん(寺山修司)の劇団と、唐さん(唐十郎)の劇団がケンカして殴り込みに行ったっていう伝説があるんですけど

ー(笑)

広田:ヤクザじゃないんだからっていう話で(笑)でも実話としてそういうのがある訳じゃないですか!

ーそうですね(笑)

広田:せいぜい何十年か前の話なんですけど…だからやっぱりそれってよっぽど「我が劇団」で「敵の劇団」みたいな。なんかやっぱりそういう劇団としてのアイデンティティみたいな確固たるモノがあるからVSっていう感覚を持てると思うんです。
でも今もうちょっと…多分「薩摩」と「長州」ぐらいの感覚だったら、薩摩藩は薩摩藩の、長州藩は長州藩のアイデンティティがあるからケンカになるんです。でももう廃藩置県みたいになってるんですよ。
多分「群馬」と「埼玉」って揉めたとしても戦争にならないじゃないですか?

ーたしかに。

広田:薩長は戦争になる世界じゃないですか。だからそういう意味ではそんなに強いアイデンティティが無いんじゃないかな、どこの劇団も。客演とかも緩々するし、皆。昔はそんなしなかったと思うんで。

ーそうですよね。

広田:枠組み自体が消えちゃってるから、そんなに内側の力って言うのがないんですよね、多分そんなに。
どこのタイミングなんでしょうね。

ー認め合うと言ってしまえば言葉はキレイかもしれないですけど…ケンカはホントにないですもんね。

広田:でも認め合ってる訳でもないんですよ、全然…。いや全然ってこともないけど!多分緩くなったんじゃないですか?

ーそうですね、「それもあるよね」ぐらいの感じなのかなぁ!と思ってしまう。

広田:劇団もあるし、劇団外の活動もするし、みたいな活動の仕方の人が増えてきたから。
それこそ演劇に生きてるにせよ、劇団に生きる人が少なくなってきてるのかも。

ー劇団の力、ですかね。

広田:どこで何が起きたんでしょうね!お互い客演とかしまくってるから、ケンカとかしてもしょうがないしなぁ…

ー確かに(笑)損をしますよね、今下手にケンカしたら。

広田:そうですね。そもそも何の話だっけ…そうだ!「自分の作品に1番影響与えた人」っていう話でしたね。
でも、作品ってことで言ったら松尾スズキさんの「フクスケ」っていうのを観てめちゃくちゃ衝撃受けたんで、それとかかな…。
あと「ク・ナウカ」とかも好きで、「ク・ナウカ」ごっことかしてよく遊んでました。

※ク・ナウカ(1990~)宮城聰主宰

ー「ク・ナウカ」ごっこ!

広田: 2人1役、Moverとスピーカーで分れて…人間でやる浄瑠璃じゃないですけど。そんな雰囲気で。

ー楽しそうですね!

 

アマヤドリHP上の戯曲の無料公開について

ーアマヤドリのHPでは広田さんの過去の戯曲を無料公開されていますよね。

広田:最初公開した時、僕は調子乗り切ってて、これは誰も考えてないことだ!とか言ってやったら…ままごとさんの後追いだったという(笑)
今でも思っているんですけど、やっぱり無料公開ってのは良い面と悪い面があるんですよ。
たとえば劇作家協会っていうのはそもそも「劇作家が劇作をして戯曲を提供することに対して<金銭的な報酬>が、日本の演劇界では確保されてないんじゃないか」っていう問題意識からスタートしてる部分もあり、劇作家協会は劇作家の立場とか権益をある種守るための団体だったりするんです。
ある種ないがしろにされる場面も無きにしもあらずだった劇作家という立場を如何に保つか、経済的に劇作家として暮らしていけるようにするか、という意識の方々がいるのに「戯曲を無料公開」っていうのはね(笑)
市場価値を破壊する行為でもあるんですよね。
だから僕も未だに必ずしも無料公開が全面的に正しいとは思ってないんです。どっかで収入得ないといけないですから。
ただ僕の勘としてですけど…ちょうど僕の世代とかはネットに関しての関わり方っていうのはすごく特殊な世代だと思うんですよね。

ーそうですね。

広田:何もないところから、何もかもあるという今の状態、ここから更に進むんでしょうけど。
高校生の頃は携帯電話どころかポケベルでやり取りしてる所から始まり。あっという間に駆け抜けた時代を生きてきたので、このままどこに伸びていくのかって想像した時に、やっぱり集合知というか…Wikipediaみたいなモノもそうですけど、web上で知識がシェアされていく。ていうことですよね。
今までは図書館とかが担ってきたような、人類が蓄積してきた知を如何にシェアするかっていうことが急にwebですごく手軽に出来るようになったっていう未曽有の時代を迎えてると思うんです。
その時に、戯曲をweb上でシェアする流れっていうのはどうしたって止めようがないし、多分その時に無料が持ってる力に中々勝てないだろうなっていう感覚はあったんですよね。まぁYouTubeであれだけ無料の動画が観れて、っていう時代ですから。そう、だからこれからどうなるのか…。観劇三昧の戯曲版みたいなのがその内出来るのかもしれませんね。

ーそうですね、あったら良いなと思いますね。
私も高校の時演劇部だったんですけど、役者が2人しかいなくて、2人芝居をやらないといけなかったんですけど、戯曲がないんですよ。2人芝居で高校生が出せるお金の戯曲ってどこにあんねんってなって。結局学校の図書館しか調べる所がなくて、高校生の分際で別役実をやるっていう。

広田:良いと思いますよ!

ーめちゃくちゃ難しかったですよ!

広田:そうですよね、きっと。

ーそれ以外選択肢がなくて。だから今の高校生とかはどんな風にして戯曲を探すのかなって…

広田:時々高校生からやりたいっていうのはきますね。それこそ、女の子の2人芝居で「ジョシ」っていうのがあるんですけど、あれとかが1番人気あるんじゃないですか。
僕の中では、かなり大昔に書いた作品だし、大忙しの中でササッて書いた作品なんですけどね(笑)もちろん好きな作品ではあるんですが。

ー時間も50分ですし、高校の大会には一番適していますね。

広田:多分1番問い合わせが多いのが「ジョシ」で…「うそつき」「ぬれぎぬ」とかやっぱり少人数のモノをやりたがる人が多いんだなっていうのは思いますね。

ー単純に人数がいないっていうのもあるかもしれないですけどね…

広田:そうですね。あとはでかいクリエーションになっちゃうんで。人数多いので言ったら「うれしい悲鳴」とか「ロクな死にかた」とかはたまにやってもらうので嬉しいですけど。

ー戯曲の無料公開をおこなってから、何か環境に変化はありましたか?

広田:やっぱり全然変わりましたよ、今までは「上演したい」なんて応募はほぼ無かったんですよ。それ以前の劇団の歴史合わせても2件くらいしかなかったんじゃないですか。だけど今は、戯曲公開以降何十件も問い合わせが来てますから。

ーすごいですね、やっぱり。

広田:そうなんです、柴くん(ままごと:柴幸男さん)の作ったあの流れに僕もある種、乗ってやらせてもらったわけですけど、その後他にも公開する人が増えていったじゃないですか、ある種止められない流れなんでしょうね。でも分かれますよね、人によって。

ーそうですね。

広田:自分の作品を他のカンパニーとか他の人たちにやってもらうことに、あんまり積極的じゃないというか…逆に言うとすごく作品を大切にしてらっしゃるっていう方ももちろんいらっしゃると思うんです。そういう意味では僕あんまり大切にしてないんですよ(笑)

ー言い方次第じゃないですか!(笑)

広田:いやいや!あんまり大切にしてないんですよ、正直!
もちろん僕が自分でやる時は大切ですけど、上演が大切なので、戯曲をパーツに過ぎないと思って割り切ってる部分も結構あるんです。だからどういう風にやってくれても、パーツとして使い勝手が良いって風に思って下さったのなら「どうぞ」ってぐらいの感覚で…。

ーHP上でもある程度上演時間の調整のために削るのとか、改変は全然良いですよって書かれてますもんね。

広田:そうですね。

ーあれは高校演劇をやった立場からすると、たぶんすごい嬉しいだろうなと思って。

広田:ザルですよね(笑)今までこの改変はやめてくれって言った事ないですから。唯一僕の名前の漢字を間違えてたっていうのだけは直してくださいって(笑)

ー(笑)

広田:でもその程度ですね。割とどういう風に転んでも、そんなに嫌じゃないかな。
あとやっぱり、僕の戯曲っていうのを上演してくれてるお陰で、たとえば関西学院にワークショップに行かせてもらったときも、何年か前に「うれしい悲鳴」を上演してくださってたから、「あの作品の作者の人が来てくれた」的な扱いになってくださって。「誰やねん!」ってならないだけでも随分楽なんですよね。

ーそうですよね。

広田:やっぱりね、「誰やねん」とは戦いですからね。演劇界の有名人はどこまで行っても「誰やねん」なんで。地域に行くとやっぱりね、誰が有名人なのか分からないですね。

ーホント芸能人レベルにならないと、誰が行っても多分「へー」って言われる。
自分の知らない地域に行った時に「あー!」って言われると嬉しいですよね。

広田:そうそう!ありがたいですし、実際ホントにやりやすい。
それに、「観に来てくれる」っていう我々にとっての集客にも繋がるんです。そういう意味では戯曲を無料でやってもらうことは上演料という形では利益を全く得てない訳ですけど、広い意味で言ったら劇団に返ってきてるっていう風な言い方も出来ると思います。

ーなるほど、そこはもちろん賛否もあると思いますけど私はすごく良い試みだなと思いますね

広田:ね!そう言って頂けると嬉しいです。

ー観劇三昧のやっていることと、やっぱり近しいモノがあるんじゃないかなと。

広田:そうですね、ポリシー的には。

ーありがとうございます。

 

3月に開始した「演技のためのジム」について

 

ー実際の参加者からの感想や、広田さんが目指されているジムに対しての手ごたえとかってどんな感じですか?

広田:まだホントに走り出したばっかりなので、まだ全然理想の形になったとはもちろん思ってないんですけど、しかし走り出しとしては思った以上に順調ですね。ニーズがこんなにあるんだっていうことに今更ながら驚きました。僕多分、色々1人で肩書があるというか《劇団の主宰》であり《劇作家》であり《演出家》であり《演技のトレーナー》でもあると思うんですけど。

ーそうですね。

広田:たぶん、トレーナーとしてのセンスの方がある。と自分では思っているんです。もちろん劇作だって演出だって頑張りたいっていう気持ちはある訳ですが…。
僕どこかで演技の教育を受けた訳じゃなくて、我流でやってるからそれもオープンに最初に言おうと思って。
よくあるのが「海外で××メソッドを学んできました」って言って演技コーチでワークショップとかスタジオ開いてる方とかもいて…それはそれですごく良いと思うんです。
でも僕の強みとしてはやっぱり実演家でずっと本番の公演をやってきた人間なので、実際のお客さん、現代の日本のお客さんとずっと触れながら…そういう意味では創作の現場に限りなく近い演技スタジオ的なことがやれているって意味で、実践的なジムなんじゃないかな、と思っています。
結構やりたがっている人がいてくれて…最初1000円でやったら、ものすごい応募が来ちゃったんですよ!ちょっとさすがに、パンクしちゃう感じだったんで、若干釣り上げてしまったんですけど…その辺りもまだ探ってますね。もうちょっと回数増やしても良いのかな。ここに自分のやってることのニーズがあるんだなっていうのはすごく思いました。
架空対談にも書きましたけど、今の演劇…俳優の力に対して結構危機感があるんですよね。

ー書かれてましたね。

広田:全然演技を習ってないで来る人たちがすごく多い。
もちろんみんな、学びたい気持ちはすごくあるんですよ、ただ日本の演劇の教育の形が全然上手くいってない。だから…生意気な言い方ですけど、僕がジムでやってることって、そんなに個性的なことは何もやってないんですよ。ものすごくオーソドックスなリアリズムの形式の中から僕が自分で取捨選択している。引用元が全部ちゃんと自分で明示できるぐらい、オリジナリティは全くと言ってもいいぐらい無いんですよ。別にオリジナリティってそんなに要らないと思ってるんです。

ー意外というか、想像してたのとちょっと違いました。

広田:いや、全然ないですよ、ある必要もないと思っているんです。ホント、日本の俳優さんはベーシックになるものが無さすぎるんですよ。それは日本の演劇の不幸だと思う。

ー確かに、気軽に習うっていうタイプの演技学校って今全然ないじゃないですか。…事務所に入ったらあったりするんですかね?

広田:ありますよ、養成所みたいなのがあったりする所もあります。
いやでも、どの事務所も演劇学校も抱えてる課題として…良し悪しだとは思うんですけど、講師が複数いるんで、相矛盾するんですよ。例えば日本の演劇やろうとどこどこの…入るのが難しいぐらいの大学に行って、色んな先生がいて、それぞれ矛盾することを言うし、極端な話、先生同士悪口を言う世界だったりもするから、生徒は混乱しちゃう。あとアラカルトになるんで、色んなことをつまみ食いするだけになる。
何て言うんでしょうね…和食全般みたいなことを一気に習わされるんで、天ぷらも寿司も刺身も煮物も、みたいなことをやるんです。まず「米の炊き方だけ学ぼう」みたいな、そういうことで良いと思うんだけど、それをやらないから。
米の炊き方にオリジナリティってめちゃくちゃ無いと思うんですよ。だけど、「こうやれば美味しくなるよ」っていう質の高い低いは絶対にある。
「こっから先はバリエーションね」っていう個性なんかは後々いくらでも付けていけば良いと思うんです。その土台になるような部分を、作っていく何かっていうのを教えてほしい。

ーその料理の例えは、すごく腑に落ちました。例えば包丁の持ち方とか、米洗うのに洗剤は使いませんよ、は教えませんよっていう。

広田:そうですそうです。

ー何となく、演技をするためにはこういう事をやらないといけないんだなって言うものを持ってる人たちが集まって、基本を教えてもらう。米の炊き方っていう演技の基本を教えてもらう。

広田:そうですね、ゆくゆくは分けていこうとは思ってます。ある程度実演経験とか基礎がある人と、ホントに入門したい方と、分けた方が良いんだろうなと思うので。

ーいつかは学校規模になっていきそうですね。

広田:そうですね~、でも学校作りたい訳じゃないですけどね(笑)
あくまでも…良くも悪くも、独裁体制を崩す気はなくて。複数の講師になる日がもし来るとしても僕一人の価値観でやる。「うちはこれをやるよ」っていうのをハッキリして、あれもこれも学べるよみたいな場所にだけはしたくないと思っています。多分特化するべきだと思うので。

ー学校でたくさんの講師に出会って、その中で自分の師を見つければいいっていう感覚ももちろんあると思うんですけど。
やっぱり広田さんの所に集まる方って、広田さんの何かに共感を得たりとか、広田さんの作られる作品が好きだから、っていう人が多いんでしょうか?。

広田:そういう人が多いですけど、7割ぐらいなのかな。でも正直な話、僕の劇を観た事ないって人も来ますよ。

ーへぇ!おもしろい。

広田:全然観た事もない、っていう人も来ますね。別にそれで、僕が嫌だっていう思いも全くないです。「観てないとは何事だ」感はゼロです(笑)。でも何の前置きもなく始めるので、集まって、自己紹介…も名前すら聞かずに台本配って、「じゃあやりましょう」って始めるんです。

ーへぇー!

広田:ディスカッションをするときに、名前が分からなくて「あなた」で押し通すのもさすがにイマイチなので、発表の時に初めて名前聞くくらいですね。でそのまま終わりまで行く。だから凄いクールですよ。

ーいや、良いですよそれ。

広田:僕も驚いたんですけど、このジムのために地域から来てくださっている方もちょくちょくいらっしゃるんです。福岡とか、山梨とか。なんかのついでで来たの?って聞いたら「ジムのために来ました」って。

ーうれしいですね!

広田:今後もライフワークとして続けていきたいなって思ってますね。理想としては今後、3つくらいのクラスに分かれてたりしたい。
今は良くも悪くもオープンなので、ある程度分かれてた方が来やすい人もいるんだろうなとは思ってるんです。
入門者で気後れする人もいるだろうし、ある程度キャリアのあってあんまり誰でも来れる場所には行きたくないなって人もいらっしゃるでしょうし。ゆくゆくは分けていく方がよりお互いのためになるんだろうなと思うんです。

ー今後がすごく楽しみですね。私も見学だけでも行かせてもらいたいです!

広田:是非是非来てください!割とオープンな空気でやってますんで。

 

劇団員の育成について

ーアマヤドリに入られた俳優さんはどんどん実力をつけていくイメージが強くあるんですが、俳優を育成していくうえで何か心がけていることってありますか?

広田:これはウチで劇団会議をするときにもそうなんですけど、とにかく「喋らせる」。

ー喋らせる!?

広田:自分の言葉で喋らせる。これはやや批判めいてますが…特に若い美女に多いかなぁ、「言葉が不自由な自分を許す環境」に甘えてる人が多すぎる。

ーほう!というと?

広田:演技ってフィーリングの部分もすごく大きいので言語化できないことってもちろん多いんです。でもそれを言語化できないと、演技についてのディスカッションができないわけですよ。でもそれをするのって当たり前じゃないですか。
これは美女の不幸だとも思うんですけど(笑)、「うん」「ね」「はい、そんな感じです」と表情だけで周りの人が意図をくみ取ってくれることに甘えてる人が多いんだけど、それじゃぜんぜんプロじゃない。
やっぱり言葉にはこだわってほしくて、自分の言葉を持ってないと他人から言葉のシャワーを浴びたときに簡単にそれに支配されてしまうんです。一人一人アーティストなんだから、自分の言語を持って、自分の意見とかフィーリングを自分で語れるようになってほしいとすごく思ってるんです。

演出側がいかに有益な話をするかというのも大事なんですけど、それよりはサジェストをして、俳優自身で気づいたり獲得していってもらったりすることが大事。まぁ僕もまだ未熟で出来てないんですけど…最終的には俳優が自分の頭で考えてもらう事が出来ないと、映画にしても演劇にしても演技をベースとしたアートというのは成立しないと思うので、そういう力を付けていってほしいと思ってます。

ーなんかすごく今納得が行きました。アマヤドリの方々を見ていると、そういう意識を持って接されているんだなと今凄く合点がいきました。

広田:双子ちゃん(相葉るかさん・相葉りこさん)も入った当初は擬音ばっかりみたいな子だったんです

ー擬音ばっかり(笑)

広田:そういう子も嫌いじゃないんですけど(笑)、やっぱりゆくゆくはその子たちのためにならないと思うので。
若い娘をやってるときはそれで良いと思うけど、いつまでも若い娘でいられるわけじゃないからちゃんと喋れる人にならないと。

ーそうですね!

広田:男の子の方は逆の現象を起こしてる人も多いですけど。

ーほう。

広田:男女差なのかな?どうかな?と思うんですけど、理詰めで入って感情とか身体がついてこない若い俳優さんが多いのでそっちをどう追いつかせてあげるか、って感覚。

ーやりたいことに身体がついていかないか、やりたいことを言語化できないかみたいな。

広田:そうそう。もちろん例外はあるので単純に男女の差ではないですけどね。
アマヤドリはしょっちゅう会議するので、劇団の方針についてとかいろいろ、発言しない人が怒られる世界なのです。アマヤドリの雰囲気として。だから苦手な人は苦手ですようちの空気は。
黙ってる方が楽って人とかに、僕はだんだん不満になってくるんですよ(笑)「あなたも意見があるはずなのになんで黙ってるの?」って思っちゃうから。その人なりの意見とか喋ることが大事だと思う。
でもやってるうちに、そのうちちゃんと喋るようになりますよみんな。

ー学生でもディベートの授業を繰り返したらめっちゃ議論できるようになりますもんね。

広田:そうそう!慣れですから!特に日本人は中高生の時代から含めて、やる機会がホントにないんですよね。

ーそうですよね。目立つ発言をすれば刺されるみたいな感じがあるので。

広田:なんでそうなるんだろう日本って。

ー私が直接お話させていただいたアマヤドリのメンバーは榊さん(榊菜津美さん)くらいなんですけど、彼女も個性的といいますか、めちゃくちゃしっかりした考え方をもっているひとなんだなというイメージがあって。

広田:あの人は凄いですから。絶ッ対に退かないです!自分が間違ってないと思う限りは絶対に退かないです。

ー強い!

広田:上の先輩とか僕であっても自分の思っている事が正しいと思っていたら何があってもあやふやに引いたりしないですね。

ーアマヤドリの人達って全員そういう芯の強さを持っているんだろうなって勝手に思ってました。

広田:そうですね。それはそうかもしれない!

ーそんな感じで育成されていってるんだな、ってすごくスッキリしました。

 

 

今後演劇活動を続けていく中での目標

広田:大きい事を言ったら映画とか演劇問わず、日本の演技にまつわるメディアを少しでもハイレベルなものにしていくために今やれることをやっていきたいなというのが自分の活動の指針ではあります。
「何人動員!」とか「あの劇場でやるぞ!」「誰々と共演するぞ!」とかそういう目標は一切ないです(笑)

ー(笑)

広田:自分が決める事でもないと思っていますし、そういうのに囚われたくないとも思っているので。
「みんな違ってみんないい」という事を建前としては言いますけど、自分の中では「素晴らしいアートとそうじゃないアート」って必ずあるので、自分の基準において水準の高い演技メディアの作品というのが増えていくようにやっていきたいですね。
アマヤドリを凄い劇団にしたいって感覚もあんまりないんですよ。アマヤドリも道具というか部分の一つなので、日本全体のって言うと国家主義者みたいになるんですけどでもやっぱり日本語でやってることの大変さってあると思うんですよね。
例えばハリウッドの映画界でイギリスとアメリカって英語を基盤にしてシームレスに繋がってる。
多分ヨーロッパ圏の人って英語で演じられるほど英語が出来る俳優さんて山ほどいるから、特に映画というジャンルにはあの人達の中である種世界が完結できて国際交流してる部分ってのがあると思うんです。
だから渡辺謙さんって凄いなと思うんですけど、日本人にはそこまで英語できる俳優さんって少ないから、ある種蚊帳の外にされちゃってて。
英語出来なきゃいけないというのも一方ではありつつ、日本人が日本語っていう言語でやってることの価値もまたあるでしょうから、日本語としての演技メディアの力を付けていきたいとはすごく思ってますね。

ー日本語の演劇って外国から見ても結構特殊みたいですね。

広田:そうみたいですね。

ージャンルが幅広いとかね。例えばアニメが日本の文化として世界に認められているのと同じように「日本の演劇」が世界に羽ばたいていけばそれはすごく良いなと思います。

広田:僕もその辺りの事をしたいという事なんでしょうね。

ーそうなった時にレベルの低いものが出ていくとちょっと恥ずかしいですよね。

広田:まあレベル低いと出ていけないでしょうけどね(笑)レベルを上げていくためにやれることはいろいろやっていきたい。
それと同時に、これはアートとしての演劇から外れた話になるんですけど、今後、演劇が積み上げてきた知識が世界的に重要になっていくと思うんです。以前は対面でのコミュニケーションを勉強して学ぶものでは無かったと思うんですよ。

ーはい。

広田:今後どんどん勉強しないと対面でコミュニケーションを取れない人が増えていくはずです。

ーああ~…

広田:LINEやSNSでコミュニケーションが取れちゃうんで、声帯を使わなくても声が出せる。変な話ボーカロイドを使えば手だけで音も出せる。だから引きこもっていてもコミュニケーションは取れる。そう考えると恐ろしい時代ですよね。在宅ワークでシステムエンジニアとかならパソコンで稼いでAmazonで食料品買えばネットだけで完結する。こんなの人類史上未曽有の状態ですからね。

ーそうですよね…!

広田:いまだかつて誰も経験したことのない時代に突入しつつある。だから引きこもりが減る傾向とかないじゃないですか。日本で見てもむしろ増えてるし長期化している。
どうやって対面でコミュニケーションをとるか、っていうのは人類的な問題なんじゃないかな。
たぶん演劇はそれを何千年も積み上げてきた歴史があるので、そういうことはいろんな場面で役立っていくんじゃないかな、と思っているんです。
だからこそ、国がもう少しお金を出してくれたらなって(小声)

ー(笑)でもそうですね。人同士の対話を学ぶことができる演劇を、国がもっと大事にしてほしいですね。

広田:そうそう。ツアーの助成金が出ないとか何事だよっていう(笑)ツアー大変なんですよ!!

ーそりゃそうですよ!(笑)

広田:ツアーで利益出すというか採算取るなんてほんと難しいんです。利益出したかったらツアーなんてやらないほうがいい。でも僕らは色んな人と出会いたくて演劇やっているわけだし、もっと演劇を生で観てほしい。
「東京に来い」じゃなくて、僕らが会いに行くことが本当に大事だと思っているんです。

ー本当にそうですね。今回は本当にありがとうございました。
では最後に次のツアー公演の予定をお教えください!

 

アマヤドリ2018 秋の連続本公演

『野がも』

作 ヘンリック・イプセン/翻訳 毛利三彌/上演台本・演出 広田淳一

『ブタに真珠の首飾り』

作・演出 広田淳一

 

【東京公演】
2018年9月20日(木)~10月1日(月)
「野がも」 花まる学習会王子小劇場

【仙台公演】
2018年10月6日(土)~10月8日(月・祝)
「ブタに真珠の首飾り」 せんだい演劇工房10-BOX(宮城)

【伊丹公演】
2018年10月19日(金)~10月21日(月)
「ブタに真珠の首飾り」 AI・HALL(兵庫)

 

《キャスト》

【野がも】

倉田大輔
渡邉圭介
中野智恵梨
相葉るか
一川幸恵
宮崎雄真
(以上、アマヤドリ)

東理紗(ピヨピヨレボリューション)
森信太郎(髭亀鶴)
梅田洋輔
内山拓磨
大原研二(DULL-COLORED POP)

 

【ブタに真珠の首飾り】

榊菜津美
相葉りこ
(以上、アマヤドリ)

古澤美樹
都倉有加

 

 

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