観劇三昧パートナーズヴォイス:【第2回】大熊隆太郎さん(劇団壱劇屋)

観劇三昧パートナー(演劇作品を配信する劇団やカンパニー)の生の声をお届けする「観劇三昧パートナーズヴォイス」第2回の今回は驚異の五ヵ月連続公演「五彩の神楽」を上演中の劇団壱劇屋の座長大熊隆太郎さんをお招きしました。

観劇三昧での動画配信とDVD制作と販売があまりにも早いと各地で話題を呼んでいるこの五彩の神楽シリーズ。秘密は観劇三昧が贈る新しい撮影プラン「スピードプラン」にありました。「早いのはいいけどクオリティはどうなの?」「実際どんなメリットがあるの?」そんな疑問をお持ちのみなさまの、ご検討のヒントになれば幸いです。(聞き手:下川恭史)

-劇団壱劇屋-
大阪と京都の狭間、枚方を拠点に活動する劇団。
高校演劇全国大会出場メンバーで2008年活動開始。
パントマイム、ダンス、会話劇、コント、アクションを複雑に融合させ、
観客を不思議な世界へ導く、世にも奇妙なエンターテイメントを創作中。
本公演は年に2~3回と精力的に活動する若手劇団。

同年代で劇団をやってみようか一回だけ

観劇三昧(以下、観):まずはじめに簡単に壱劇屋の劇団のご紹介と大熊さんご自身の生い立ちを簡単に教えてください。

大熊:生い立ちですか(笑)
生い立ちとちょっと似ますけど人を楽しませる仕事に興味があって、演劇をやりたいなと思ったんですけど演劇といえば吉本新喜劇みたいな感じで思ってたので中学生までは何の関係もないバスケ部とかに入ってたんです。それでも高校生の時に演劇部入ろうと思いまして 。吉本新喜劇みたい事をやろうと思ってたんですけども、そういうもんだけではなくいろんなジャンルがあるという事をやっとそこで知ったんです。
その時は同世代に入ったメンバー達がやる気のある人達で自分で色々やりたいなみたいな人が多かったんです。

高校3年生のコンクールの時に近畿で優勝しまして全国大会の切符を手にしたんですけど制度的にコンクール自体は次の年の夏にやるんですよ。なので近畿1位になっても全国は卒業した後みたいな。
でそれもなんかなーと思って同年代で劇団をやってみようか一回だけと作ったのが今の壱劇屋です。

その時は別に僕は代表ってわけじゃなかったんですが一回だけやろうって言ってたのが「もう一回やろか」と続けていったんですが、節目節目で「就職します」「大学では演劇はやりません」みたいな時期があった後に僕が座長になりまして、これから一緒にやっていくメンバーも何人か残ってくれて、今まで続いてる感じですね。なので最初は高校演劇のメンバーで始めたんです。

観:その時のメンバーが今も残っている。

大熊:そうですね。出入りはありますけど、ほとんど残ってますね。ずっと照明やってもらっている人は普段は演劇の現場はやらない人なんですが、ウチは頼んでやってもらってます。演者のコアメンバーと照明さんは高校からずっと一緒にやってますね。

観:そうなると十年くらいいっしょにやってることになりますね。

大熊:そうですね。2018年は僕が座長になってから10周年なので来年は10周年記念としまして色々動こうと思ってるんです
観:おお!
大熊:ちょっとサバ読んでますけどね(笑)。作り始めたのはちょっと前ですから。

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観:(笑)じゃあ来年は楽しみですね。

初期メンバーみたいなかんじ

観:次に、大熊さんと観劇三昧の出会いのきっかけを聞かせてください。

大熊:これはよく覚えてなくて、いつの間にか、つながってたんですよ。
当初、(ネクステージの)社長の福井さんは客席で観てくれてまして、お客さん同士の交わりの中にいる一人と勝手に思ってたんです。まだネクステージという名前もなかった頃だと思うんです。

その頃は、福井さん以外にも、石田1967さんという演劇ラブな方が企画したLINX’Sというイベントの方が有名でして、僕たちも出させてもらってたんですけど、何回も公演を打つエネルギーある企画だったんです。

その時期に「店を持ちます」と別の角度から切り込んできて、凄いなと思えることをしはったのが福井さんなんです。その当時から福井さんの事は知ってたんですけど「あ、本気の人やった」と。

観:改めて(笑)

大熊:改めて(笑)。劇場でお会いするたびにちょっとずつ話して「いつかまた話しましょう」「いつかまた飲みに行きましょう」を繰り返して。
そういうのってよくあると思うんですけど本当に飲みには行きたいけどもなかなかスケジュール表を見て合わせるほどの労力を使えない(笑)。
それがずっと続いてたんですけど、ある時福井さんから「配信サービスを始めるので壱劇屋さんの作品どうですか?」と聞かれて「あ、ウチはなんでもOKです。よろしくお願いします」とお渡してみたらその後はあれよあれよと大きく。

観:(笑)

大熊:扱う劇団も商業、反商業問わずにどんどん展開するし、東京にも行くし、劇団と企業は成長のスピードがちがうというのを実感しましたね。規模感が違う事をやってるんやなと。劇団にその成長が当てはまらないのはなんでやろと思ってみたり。

観:芸術とビジネスの違いは結構あるかもしれません。では観劇三昧とは自然につながっていたんですね?

大熊:なんていうんですかね?ホントにいつの間にかですね(笑)。
まだ始まったばかりだったので配信の数も少なかったので初期メンバーみたいなかんじでずっとお世話になってますね。
あとは武信さんの影響もありますね。小劇場界で有名なカメラマンと映像編集者さんなので僕らも自然と他現場でお世話になっていたんです。そんな武信さんが観劇三昧に入りはったのでより密着度があがりましたね。

自分たちでやろうとすると仕事が増えてしまう

観:今の壱劇屋さんの配信作品は13作品で、物販も利用してもらってるので壱劇屋さんには大変お世話になっているのですが、観劇三昧を利用して良かったなと思う点はありますか?

大熊:僕ら劇団って公演以外で目に触れることはないじゃないですか。年に多くて3回くらいの公演で作品を観てもらってグッズを売る以外には。大衆演劇みたいに1年間劇場を変えながらずっと公演できるわけでなければ、劇団四季みたいに次々演目を変えながら公演ができるというわけでもない。
それでもここにきたらいろんなグッズがいつでも買えるし、映像を通して好きな作品、知らん作品を見られるっていうのはかなり大きいと思いますね。

今では youtube とかニコニコ動画とか色々媒体はありますけども劇団側からするとややこしい面も多々ありまして。自分たちでやろうとすると仕事が増えてしまう。それをまるごと委託できるというのはとても助かってますね。

観:嬉しいお言葉ですね。それだけ信じていただいて。

大熊:(笑)逆に言うと僕らも観劇三昧使ってますよとアピールすることで観てもらえたり買ってもらえたりできるので、良いように利用させてもらわないとなと。

観:お客様の目に触れて少しでも劇場に足を運ぶきっかけづくりを手伝えたらなと思うんです。

大熊:それに関連するんですけど、ウチのお芝居を生で観たことはないけど、観劇三昧のアプリでウチの全作品観て入団してくれた人もいるんです。
地方で仕事してた人なんですけど、劇場が近くにない環境だったので観劇三昧で演劇を観ていたそうなんです。

観:映像作品の撮影や編集についてこだわってる部分はありますか?

大熊:正直にいうとわからないんですよ。実際のところ、今のクオリティがゲキシネとかに比べたら音とか光とかが映像用に足されているものではないのでもう少しクリアになればいいのになくらいの考えはありますけど、特にこだわりは…。
あえて言うなら生で観に来たお客さんは全体通して自分が見たい画を観るじゃないですか。ところが映像だと演出家が見せたい画をくりぬいて観せられる。そういう演出的補正で見せられるように編集に頼んだりはしてますね。

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クオリティが下がるのかなと思ってた

観:今回の五彩の神楽は1作目からスピードプランでご利用いただいてるんですけど、大熊さんはこのサービスをどのように知りましたか?

大熊:(ネクステージの)三坂さんに教えてもらいました。安く、配信もすぐにできますよと。

観:このプランを選ばれた決め手はそれですか?

大熊:ですね。決め手としてはかなり大きいですよね。やっぱり小劇場で公演を打つというのは儲け度外視みたいなところも正直あるので、予算が少ない。そこでDVDですとか映像の収益はすごく主力の収入源ですし、なおかつ撮影代金も安くなるなら越したことはない(笑)

いまやってる五彩の神楽は5か月連続月に一回の公演なので、例えば9月の公演の時に8月の作品が売り出せるというのはものすごい販売チャンスだと思うんです。これは普通のプランでは成しえないことですよね。そのうえで安い、となればいいことしかないんじゃないかと今公演しながら思いますね。

今までもそうなんですけど、公演を打ったら映像化が次の公演に間に合わないからもう一つ後の公演の時にその時のDVDを出すという事をしていたんですけど、今回の企画ではもったないなと思ったんです。だからこそ翌月には出そうと。

観:今回の企画自体がスピードプランにマッチしてますね。

大熊:そうですね。すごくマッチしてます。別に5個続き物ではないので単品でも楽しめるんですが「見逃した!」って人も公演終わってすぐに配信されるので観てほしいですね。

撮影に来てくれるスタッフさんもすごく融通の利く方というか気の付く人ばかりで、台本をよく読んで、下見にも来てくれて心強かったですね。なのでリアルタイムなので雑になるんじゃないかという心配はなかったですね。

観:DVDと配信の2本立てで進めていくなかで「DVDが売れなくなるから配信よりDVD販売を先にしたい」という意見を劇団からよく聞くのですが、その点は気にならなかったですか?

大熊:なかったですね。配信を観た方もDVD買ってくれてますね。ウチではもう扱ってない作品も配信してもらってるので登録して観てもらえるのもいいですし、DVDでも通販やってる物とやってない物がありまして、やってない奴はそれなりに事情があるやつなんですけど…(笑)。それを配信してもらう分には何の問題もない物なので、表立って堂々と見せられるといいますか。ヤラしい話(笑)。

観:事前にイメージしていたサービスと実際に利用したサービスにギャップはなかったですか?

大熊:いや…どうでしょう?ギャップの話をするならはもっとクオリティが下がるのかなと思ってたんですよ。いつもは生なので失敗することも考えて、昼と夜撮ってもらっていい方を使ってもらうというニュアンスでやってもらってたんですけど、そういうところがもっと融通利かなくなかったり、悪くなるんじゃないかと勝手に思ってたんですけど、ギャップとしてはいいギャップでしたね。むしろ何が変わるんだろうと。聞いたところでは編集もリアルタイムなのでその分楽は楽だと言ってはって。例えばウチがもっとカメラの台数を入れてたら普通のプランの方がより細かい調整が出来る分いいんでしょうけど、今のウチのカメラ台数ではそんなに差が出ないんじゃないか、というのが正直なギャップですね。
もっとカメラが6台とか7台とかになってくるとリアルタイムでやってる隙がなくて大変になりますしそれは無理なんじゃないかなと思いますけど、3台とかの場合はこれ以上ないプランになるんじゃないですかね?

観:マイナス面の話は出てきませんでしたね。

大熊:そうですね。ビックリしました。

観:逆にプラスに感じてもらえる面が多かったということで。

大熊:ですね。今後カメラが増えたら話が変わってくるんでしょうけど。

観:先ほどの話にもあったように撮影にはまとまった金額の出費が必要になりますが、ウチは3つの撮影プランがありまして、通常の撮影プラン、今回ご利用いただいたスピードプラン、それともう一つ編集がない代わりに2万円で撮影できるシンプルプランというものがあるんです。金額だけで見るとシンプルプランは2万円なので、若手の劇団さんから見るといいように映るケースもあるらしいんですよ。

大熊:あー。

観:実際に蓋開けてみると編集が大変だったと

大熊:はいはい。そうですよね。

観:今回のスピードプランもそうですけど、DVD制作をして1枚3,000円とかで売れればある程度損はしないと思うのですが、そのあたりについて不安なことはありませんでしたか?

大熊:単純に計算したら、もちろんいくらで売るかにもよるんですけど、お頼みしたほうがこちらの抱える時間と労働力がすごく減るし、そもそも僕の立場だと映像編集できるスキルはないからお任せしなければいけないですし、勉強して自分で作るよりもいいものができるのは間違いない。
無理して2万で定点映像だけで記録映像程度のものを売るってなったときに1枚当たりの単価をあげるのはきついじゃないですか。商品のクオリティとして。
3,000円の舞台を定点映像で3,000円で売るというのはちょっと強気かなと思うんです僕は。
世の中のある程度の相場の基準が生まれてしまってるので。その時にお任せして、何枚を売ればそれまでにかけたお金を取り返せるのかと考えたら意外と少ないじゃないですか。言うても。自分の次回公演の時に売る枚数を考えて計算してみればいいような気がしますね。

もし自信がないなら定点を2万円でお願いして、1,000円から1,500円で売ってみる。それが100枚売れたとなったらそれだけでお値段の指標や何枚売れるかの指標が出ると思うので、それで計算したら全然やり方が変わってくる と思うんです。ザックリ計算で。

観:ザックリ計算。

大熊:ザックリ計算でいいと思うんです。それすら僕らがやってなかった時期は、なんでそんなことしてたんやろみたいなことがたくさんあったので、まずはザックリ計算から始めてみれば、頼む価値が自然と出てくるかなと思いますね。よほどヒマで編集したいという事であればぜんぜんいいとは思いますけど(笑)
たった数枚のために毎日寝る時間を3時間づつ削ってたら、大きい目で見たときに何のためにやってるのかということになると思うので。

観:計算して任せるとこは外に任せて、空いた時間は創作活動に費やすという感じで。

大熊:その方が立ち振る舞いとして上手いと思います。

観:スピードプランを観たファンの方々の感想はいかがでしたか?

大熊:一度スピードプランで撮った映像の上映会をやったんですよ。8月にあった 公演を10月の半ばにすごい大きい公共ホール施設の小ホールをお借りして大きいスクリーンで流させてもらったんです。そこに来てくれたお客様は楽しんでいただいて、劇場でも上映会でも観てくれた人は「あのときの迫力を思い出しました」とか「大きいところで観たら迫力ありました」とか、何人かいらっしゃった初見の人たちは「良かったです」「面白かったです」と帰ってくれたのでその点はちゃんと楽しめるものが立ち上がってると思いますけどね。

観:なるほど

大熊:どうしても照明が暗いと映像にしたときにしんどいですね。ウチが使ってる照明機材が陰影が激しすぎる時があったりして、その辺は個人的には繊細な問題やと感じてるんですけど。表情の半分以上が光で影になってるとかは、映像さんと照明さんの兼ね合いがすごくデカいなという感じがしますね。それはまた技術的な話になるんですけど。

観:実際にスピードプランをご利用されて、満足度を10点満点でつけるとしたらいくつでしょうか?

大熊:オールパックプランと比べてと 言われると10なんですけど、僕の中で差が見つけられてないというのがポイントで、その差がカメラの台数とか明確なクオリティの差が僕みたいな映像素人には見つからなくて、なんでしょう…10点なんじゃないかと思いますね。元々の音をもっとクリアに聞き取りたいとか映像では暗いけど生ではもうちょっと見えてたからどうにかならないのかなとか、もっと大枠の部分を除けば10点ですね。

観:10点!?ありがとうございます!

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生で観てもらってからそれを思い出すように映像で観てもらう

観:最後になりますが、五彩の神楽のみどころについて教えてください。

大熊:今回セリフがない殺陣と演技で見せる演劇なんですけど、映像配信サービスなので画のきれいさと言いますか面白さといいますか、殺陣の美しさだったり表情や仕草、立ち位置の関係性で何を表現しようとしているのかに注目してもらえればと思いますね。映像なので顔のアップもありますしより繋がりを理解しやすくなってるなとこれまでの配信分を見て思いましたね。

申し訳ないですが映像では収録できないライブ感とか音の圧とか最前付近なら俳優の走る風ですとか、いろんな熱量がかなり高い舞台なので、まずは生で観てもらってからそれを思い出すように映像で観てもらうのが一番面白いかなと思いますね。
あとはセリフがないことによって、いろんな解釈で物語が観られるんです。例えばMVとか言葉のない絵本みたいに独自に面白いポイントを見つけるといった楽しみ方をお客様はしてくれてたと思います。僕自身この3作品出てなかったりしてたので、

観:これからですもんね

大熊:そうなんです。なので後で聞いたら「そこはそんな気持ちやったんか!」「俺の思てたほうでも面白くなるけどな」みたいな楽しみ方もできる。ある種誰でも観てもらえる作品だと思います。なのでそれを堅苦しく捉えないでほしいんです。自分なりの楽しみ方で観られるのがポイントですね。

殺陣のクオリティは関西では高い方だと思うので、その辺も楽しみにしてほしいです。11月12月もめちゃくちゃ戦ってめちゃくちゃかっこよく仕上がってますので、是非是非観に来ていただいて、DVDも買って、映像配信も観て欲しいなと思います!

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劇団壱劇屋 五ヶ月連続ノンバーバル公演「五彩の神楽」
座長・大熊隆太郎ついに登場!
【11月 戰御史 -Ikusaonsi-】
【12月 荒人神-Arabitokami-】

http://ichigekiyaoffice.wixsite.com/ichigekiya

目先の金額にとらわれず、ほんの少しだけ未来をザックリと計算すること、どのプランを使ってどのように届けるかを考えればおのずと使うべきプランは見えてくる。
任せられる部分は思い切って外部に任せる。そして、自分たちの創作活動にしっかりと注力する、選択と集中。壱劇屋の創作活動に対するストイックさを垣間見ました。

どれほど映像のクオリティが上がろうとも観劇はやはり生が最高。映像はあくまで復習に使う。

大熊さん、重ねてありがとうございました!

 


 

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