劇団アレン座の第七回本公演『土の壁』が、​2022年3月9日(水)から、すみだパークシアター倉で上演される。

今作は2019年の第三回本公演『積チノカベ』を新たなキャストで再演する。

今回は、『土の壁』に出演されるキャストの方々と演出・脚本の鈴木茉美さんに今作についてお話を伺い、作品への思い、見どころなどを伺った。

■今回お話を伺った方々(写真左から)(敬称略)
太陽役 來河侑希(劇団アレン座・主宰)
峻哉役 塚越健一(DULL-COLORED POP)
伊吹役 林田麻里
萌葱役 山田愛奈
演出・脚本 鈴木茉美(劇団アレン座)


ー稽古が始まってからどれくらい経ったのでしょうか。

(來河)二週間ちょっとです。

(林田)いつもはシーンに分けて稽古しているので、今日はいつも会わない方に会えたのでテンション上がってます(笑)。

 

ー再演に至った経緯を教えてください。

(鈴木)次に何をやるかは主宰の來河と色々話し合って、この時代に何をしようか、この時期に何をしようかを考えて決めました。

(來河)2020年の3月~5月末まで緊急事態宣言があったんですけど、そこから演劇は出演者を3人からマックス5人の役者さんだけの作品を2年間ずっとやってきました。

この2022年の今、3月の公演に向けて久々に12人の役者さんにお願いして、大人数の作品をやろうと踏み切らせていただきました。それはもちろん、コロナのことでの情勢を見ながらというのもあるんですけど、2年間少人数でやってたときはコロナの感染者を出さずに、そしてコロナでの演劇との向き合い方を理解できてきた、見えてきたという意味ではそろそろ本来やりたかったことに近づいていくため、というのは一つあります。

この作品が一回目の作品(初演)と二回目の作品(今回の再演)で明確にテーマが違うなって思っていて、僕から言うと人々の分断とか、コロナになってリモートワークをしたりとか色んな時勢がある中で、人と人とのコミュニケーションがどうしても少なくなって、ソーシャルディスタンスをとってマスクをするってだけでコミュニケーションってのは半分以下に落ちてるとは思うんですけど、人々のコロナに対する距離感も違うし、考え方や思想っていうのも分断されていってるっていう感覚があるなっているのがありました。
それで今のこの時代に『土の壁』という作品は届ける意味があるのかもしれない。そして、この作家がこの作品をやる意味が再び出てきたんじゃないか、(初演時とは)別の意味がコロナを通して出てきたんじゃないのかって思って、この公演をこの時期にやろうってなりました。

太陽役・來河侑希

ー初演から考え方や捉え方が変わったことはありますか?

(鈴木)初演は『積チノカベ』っていう風に書かせていただいたんですけど、そのときの時代っていうものが私の中で”歴史の中の一つの時間を生きているな”っていうイメージだったんです。何かが降り注いでだんだんと積もっていく時代だったなって思い返すと思います。そのとき明確に『積チノカベ』にしたいなっていう思いよりも、今思い返したときにあの時はそういう時代だったんだなっていうくらい今ははっきりと壁がもうできたことがお客さんや社会には見えているんじゃないかなと思って。積もりきったものっていうのは、元々あったけれど、見えてなかったのがコロナによって見えている人たちはたくさんいて、じゃあ明確に『土の壁』というタイトルでいいんじゃないかと思いました。それで、その部分を脚本に起こすにあたって強めた感じです。

 

ーなるほど。タイトルが初演では『積チノカベ』から再演で『土の壁』に代わっていたことにはそのような思いが込められていたのですね。

ー今回の再演では現在の社会情勢とリンクするような部分はあるのでしょうか?

(來河)前提として福島の原発の話はしてなくて、チェルノブイリでもない完全に隠蔽された原発事故っていうのがあって、そこに起こったある村の話になってます。

そこでは一ヵ月に一回定期健診っていうのがあって、村の人たちの体調を管理していて、本当に悪くなった時だけ告げる。そこで酪農とかやってるんですけど、牛乳とかすごい放射線濃度が高い牛乳を知らずに飲んで生活している人がいる。政府はそういうことを言わなくて、ドキュメンタリストが入った時に皆があれ?って気づいていくっていう話。あとその放射性廃棄物をどこに置くか、どういう風に処理しようかっていう話を『土の壁』に置き換えてやったというのが一番最初です。

そのときのテーマは「知る」こと。知っていかなければ僕たちは何も知らないということ。また、子供たちがどう選択していくかがテーマでした。

今回の『土の壁』は、2019年から3年の間に、世界が大きく変わりました。コロナが流行って、人々が分断されました。その時代背景を今回の「土の壁」は入れさせていただきました。彼らがどう壁を壊していくのかという新しい話になっていきました。

 

ー來河さんは初演にもご出演されていましたが、再演で演じ方など変わった部分はありますか?

まず、共演者が違うので初めてやる役だと思ってやっています。バックボーンも変わっていますし、全部変わっていると思ってやっています。再演だから前回のことを追うということもないです。

ただ、初演時に原発のことを調べてはいたので、そこから2年間経ってエネルギー問題に対して考えることが増えました。

 

ー再演で初めてご出演されるお三方(塚越、林田、山田)にご出演が決まった時のお気持ちを伺いたいです。

(塚越)僕自身、自分が所属している劇団(DULL-COLORED POP)で、『福島三部作』や『Caesiumberry Jam』とチェルノブイリや福島を扱った作品に参加していることもあり、そのときにも色々とお話はしてるんですけども、実際起きている災害をこういう言い方をしてしまうのは不謹慎かもしれないんですけど、あくまでこれってきっかけでしかないと思うんです。原発や大震災、チェルノブイリの事故っていうのは、あくまで一つのきっかけであって、それによってその時の社会とか世界が持っている問題をあぶりだしたっていうだけの話なんですよね。

私がこういう作品に参加するときに考えるのは、じゃあそこに描かれている問題、社会が抱えている問題は一体何だろうって突き詰めて考えること。だから、その一つのトピックスとしてのきっかけになっている事故に目が行きがちではあるんですけれど、それによってあぶりだされたその周りの状況であったりとか、人物たちが抱えている問題をどう描いていくのかってことに力点を置きたいなという風に思っています。

またこういう機会をいただけたんだなと思って、やっぱり扱うものが大きいですし、今現在それで苦しんでいる人もいらっしゃる中で全然終わった問題ではないので、そういったことにもきちっと目を向けながらでも決してそこから逃げるのではなく、ちゃんと真摯に向き合っていかなくてはならないっていう風に思っています。

峻哉役・塚越健一

(林田)出演が決まった時は嬉しかったです。楽しみでした。コロナになって約二年ほど舞台に立っていなくて、久しぶりに生でお客様の前に立つということの嬉しさと緊張、という感じでした。

(山田)私は元々、命を題材にしたものや、狭い空間で生きていくような作品に携わりたいっていう風に思っていたんです。それで、この作品のお話をいただいたときに、命に似つかわしい作品だと思っていて、お話をいただいたときはすぐやりたいと思いました。
私は今23歳なんですけど、すごく自分の中で芸能生活に迷いがありました。なぜかというと、元々10代の頃からモデル業というキラキラした憧れるような仕事をしていて、でもどこか自分の中で伝えたいことはそうじゃないんだよなっていうのがありました。今の年齢って何を演じるかってすごく難しいんですよ。女性の23歳って。男性だったら年齢を重ねていくと渋くなっていったりするんですけど…

(塚越)そんなことないわよ。いつだって若返りたいわよ。(笑)

(山田)ただ、殻を破りたいっていうのがずっとあって、今回萌葱って役も自分が演じてきたことのないキャラクターだったので、ここで役者人生を一歩前に進めたらいいなっていうのがありました。

 

ーこんな人に観てほしい、これを伝えたいということがあれば教えてください。

(來河)昔はドラマ・映画・舞台の3つくらいだったのが、YouTubeやNetflix、Tik Tokとか、映画の数が増え、サブスクの数が増え、多種多様な作家が届けたい言葉っていうのが色んな視聴方法で見れるようになりました。それは喜ばしいことだと思うんですけど、その分ライブで見てもらうってことに関してのライバルが増えたなって思っていて、僕らが演劇をやること自体の情報をキャッチしてもらうだけでもすごく大変になったなって印象があります。

僕らが今、熱い思いを持って演劇をやっていても、届かない、届けにくくなった。もしかしたら(情報に対して)センサーは発達したのかもしれないけど、ある種考える力は退化していて、もしかしたら作家も歴史的に見たら退化している可能性がある。便利じゃない、ある種、現代からみれば効率の悪かった時代の時の方が面白い作品を作っていたのかもしれない、っていうふうに僕は思っています。

以前、ある国の難民キャンプに行ったことがあって、そこで殺陣のショーをやらせていただいた時に、現地の人たちが目をキラキラさせてくれた。その反応を見れた経験が、自分自身の表現活動に対するルーツです。演劇をやるにあたって、見てもらってどういう風に感じてもらうのかっていうのがすごく大切なことだと思います。今は選択がたくさん自由にできるからこそ、一つ一つの大事なメッセージを受け取るのが散漫になっているような気がするんです。だからこそ、演劇文化だと思います、生で観て、お客さん同士の会話が生まれて、それで波及していく。生の言葉で波及していくってことが逆に今すごく大事なんじゃないかなと。それが他のエンタメとの差別化をすることなんだろうなって思っているんですね。

(鈴木)私は演劇っていうものが、演劇界っていうものが閉鎖的だと思っています。私自身が演出家になるっているのが演劇をやりたいっていうところから入っていなくて。学校も通っていなかったし、演出についての勉強もしたことがないし、人とのコミュニケーションの仕方も知らないし、照明さんにどう言ったらいいとかも何も分からない状態から入って、先輩も後輩もなくこの業界に入って、私自身は演劇界に入ったつもりがあまりなくて、お仕事の一つとしてやらせてもらってて、だからか分からないですけど、演劇界じゃない人に観てほしいっていうのがずっとあって、Netflixとかそういうものと同じように、趣味・演劇っていうのが一般的になればいいなってすごく思っています。

最近ようやく演劇が好きになって、演劇界にいる意味や作品を作ることの意味が、自分の中で仕事じゃなくて、やりたいものになったんです。だからこそ、演劇や演劇界っていうものを外から見てこれは必要とされるだろうなって思っているのを、今ようやく「結構演劇面白いよ」って一般の方々に伝えられる気持ちになったなと思ったので、演劇を知らない人にも広がるような演劇をつくっていけたらなと思ってます。

(林田)ウクライナのことがあり、色んな事が起こるじゃないですか。3.11やコロナのときなど、「演劇やってて良いんだろうか」って心が揺れることもあるんです。でもやっぱり、私は私ができることをやるしかないし、私も色んな作品で世の中のことを知っていったし、私が何かの作品をやることが誰かのきっかけになっていたらそれがすごく幸せなことだし、それが大げさなことじゃなくても、ちょっと楽しかったでも、気晴らしになったでも、新しいこと知った、でもなんでもいいんですけど、見てくださった方の時間や心が埋まったり、そうなるとすごく幸せだなって思ってやっています。

演出・脚本の鈴木茉美

(塚越)今回コロナっていう状況が起こって、日本に住む多くの人たちは、阪神淡路大震災や中越地震、東日本大震災が起きたときに、映像を見たり被害に遭われた方の話を聞いたりして心を痛めたり、何ができるんだろうって自問自答をしていたんですけれど、当事者じゃなかったんですよ。だけど今このコロナっていうものを迎えたときに、初めて日本国民全部が当事者になったと思うんですよね。当事者になったときに見えてきた世の中っていうのが、今まではテレビの向こう側で同じ福島に住んでる人たちが同じ福島に住んでる人を差別したりとかいじめがあったりだとか、というような痛ましいことが今自分たちの間では起こってたんですよ。貧富の差があったり、他人と区別することで、どっか見下すことで足元をようやく保ってぎりぎり立ってたと思うんですよね。それで今コロナっていう状況になったときに無意識でやっていたことがものすごくあからさまに露見してきたんですよ。他人を中傷する、誹謗する、差別で他人と比較して、より自分のために何かできるんじゃないかっていうようなすごく余裕のない、すごく狭いいっぱいいっぱいの状況に皆が陥った。その時に考えなきゃいけないのは、何が必要で必要じゃないのか、何が一番で何が二番、三番…なのかではなくて、その人たちにしかできない仕事があって、それはどれ一つとして欠けちゃいけないことなんだっていう当たり前のことをもう一回当たり前に考えられなきゃいけない

私たちは今確かにボランティアには行けません。けれども、私たちが今ここで何か表現をすること、それを観てくださることで救われる人がいるのかもしれない。そのことに我々は誇りを持って板の上に上がんなきゃいけないなっていうのはすごく感じてます。

観ていただいて、何かを感じていただいて、それがどっかで誰かの救いになったり誰かへのエールになればいい、そうであることを信じて私たちは板の上に上がっていこうっていうふうには思いますよね。

ー山田さんにお伺いします。山田さんのような若い世代は演劇を観る機会が少ないと思うのですが、どういった方に届けたい、こういうメッセージを届けたいという思いはありますか?

(山田)私よりももっと若い子たちってなかなか劇場に足を運んで演劇を観る機会って本当にないと思うんです。私もこの業界に入るまでは、一人で自分の足で舞台を観るってこともなかなか無かったですし、手軽な映画館とか雑誌を買おうって思ってたんですけど、Netflixとか色んなアプリがある中で直接会って、対面して、演劇を観ることで得ることがあると思います。例えば、若いから難しい題材を観たときに分かんないから面白くなかったとかじゃなくて、すごく考えさせられたなあとか自分を知らないことを知れたということが私を含めた若い世代の子たちに起こってほしいですし、もっと多くの方が演劇に触れる機会になればいいなと思っています。

萌葱役・山田愛奈

ー稽古場での雰囲気はいかがですか?

(山田)私、人見知りなんですけど、キャストの方々が年齢関係なく積極的に話しかけてくださって、同じ目線で話してくださったり、良い作品をつくろうという考えを皆が持っていて、人見知りの私としてはとても嬉しいです。たくさん自分から話しかけられるようになったのは、キャストの皆さんのお人柄だなと思います。…うまく言えてますか?

(林田)さっきからすっごい上手だよ!

(塚越)今のが”あざとい”っていうの…?

(一同笑い)

ー作品をつくっていく中で意識されていることはありますか?

(林田)今回は実在の場所や人物が出てこないSFの世界です。この話を読んだときに原発の話も出てくるけど、色んな話が出てくるなと思っていて、観る方によって何の話だったかが変わるんじゃないかなと思って、それがすごく面白いと思ったんです。でもだからこそ、演じているときには、自分の中でしっかり感触を得て演じないとすかっとしたものになってしまいます。稽古場では、私が演じる家族のシーンについては、チーム内でどういう世界観で何が弊害なんだろうねっていう話をしたり、家族の中でも価値観が違うと思うので、家族の中にも壁があるよねってところにはなんとなく辿りついているところです。それぞれの価値観だったりとかを確認しながら、SFだけどしっかり自分事として、実感を持って演じられるようにというのは気を付けているところです。

 

ー観る人によって色んな要素を含んだ作品ですよね。

(林田)私は色んな要素を含んでいる作品だと受け取ったので、さっき先輩(塚越さん)がおっしゃったように、自分たちは当事者じゃなかった、でも当事者として演じるわけですよね。どこまでやっても足りないんですけど、それは演じる俳優の誠意として想像して、勉強して、やらせていただきたいと思っております。SFの世界ですが、観る方によって、描かれている何かの当事者だと感じられる事が沢山詰まった作品だと思うんですよね。家族のこと、原発のこと、分断のこと、色んなところでこれは自分の物語だと感じたときに、努力してその人の代わりになれたらいいなと思っています。

伊吹役・林田麻里

ーご自身の役について教えてください。 

(來河)土の下の人です。国営局っていうところで働いていて、「神の審判」(作中で起こる事故のこと)で妹を亡くしてあることを考えている人っていうような役です。(山田さん演じる)萌葱の叔父で、(塚越さん演じる)峻哉の親友です。

(塚越)土の下の人間です。ものすごくある意味善良な人というか、それこそ今の我々のように、当たり前を当たり前のように享受して、ある意味その世界に疑いを持っていない。もちろん土の上の存在も分かっているし、そこへの思いもあるんですけど、一生懸命土の下で生きております。

(林田)(塚越さんの発言を受けて)一生懸命土の上で生きております(笑)。
土の下に移住した方が多い中、土の上で生活している父親のいない一家の母です。親でありながら子どもたちのことを異常なまでに心配はしてるんですが、その心配の仕方とかはどうだろうかというところや、ちょっと進んだり考えたりする力を失ってしまっている、傷ついたところから離れられずにいる人間です。

ちなみに”伊吹”(いぶき)という名前は非常に気に入っております(笑)。この前ふと新しいハンドソープを買いまして、いい香りじゃないかと思って名前を見たら”いぶき”でした。それで一生懸命手を洗いながら過ごしております(笑)。

(山田)私は土の下なんですけど、16歳の役です。私が萌葱という役で、もう一人(北村優衣演じる)水菜という同い年の子がいます。
その二人には異様な雰囲気のお芝居や、空気感があります。自由であり、特に大人たちが悩んでいるようなことは悩まず、それすら小さいことだと思うくらい16歳でありながら(内面は)もっと子どものような役なんです。萌葱と水菜は、土の上から来た大人の方たちや、土の下で暮らしている方たちが作り上げてきたものの中で自由に生きてきた子どもなんですけど、同じ16歳でも土の上の子どもと、土の下の子どもでギャップや違いがすごく色濃く出ていると思います。

 

■劇団について

―今回『土の壁』は劇団として7回目の本公演となりますが、劇団として変わったことなどはありますか。

(來河)メンバーは変わっていなくて、ずっとほぼ同じスタッフや技術部です。作品によっては美術家さんや作曲家さんは変わるんですけど、音響さん、照明さん、舞台監督さん、メイクさんは変わらず同じメンバーでやってきました。一身上の都合で退団したメンバーとかもいたんですけど、変わらない考え方とメンバーでやってきて、その上で手伝ってくださったり、ご出演いただく皆さんが増えてきて、元々掲げていた理想や思いを叶えられる状況になってきたのかなというのが変化ですかね。最初から思いというのは変わっていないです。

 

ー元々劇団として掲げていた理想というものはどういったものでしょうか?

(來河)既成概念に囚われない作品づくりを演出・脚本の鈴木茉美と共に作ること。なぜこの時代に必要で、それはどう波及していくのか?なぜそのテーマを自分たちが語る必要があるのかということを念頭において作品作りをする。その上で、新しい発想、特徴を持った方々と、面白い化学反応を起こし続ける。セオリー通りではない作品を作り続けることを目指しています。その理想はずっと変わっていません。作品ごとに所縁がうまれた方々を反映させることが、時代に求められていることだと思っています。

 

ー劇団アレン座さんの作品は客演の方が多いイメージだったのですが、変わらないメンバーや信念があるからこそ劇団として変わらないものがあるのだと感じました。

ー今回初演時からキャストがガラッと変わったと思うのですが、それについてはいかがですか?

作品が変わったので、違うキャストでという思いがありました。再演台本を読んで、大きく作品への印象が変わったこと、テーマが更新されたことが、キャストを一新させていただいた理由です。

 

ー作品の魅力や見どころをお願いします。

(塚越)とにかく観ていただいて今一度考えていただく。それは自分自身や、自分の周りの環境、今の社会状況にフィードバックされるのかもしれません。どう捉えるかは観ていただくお客様それぞれの個人の見方、価値観で構わないと思います。我々としては今より多くのことを考えていただけるきっかけになる作品をつくろうと日々もがいております。

最近、個人的に”キャッチ―さからの脱却”っていうものを掲げていて、分かりやすさからの脱却といってもいいんですけど、分かりやすいが至上主義みたいな消費されていくメディアの世界ではなくって、もう一回見て分からない、分からないなら調べたり考えようよ、もう一回周りを見回してみようよ、そういう手間を楽しめるような作品になればいいなって思ってます。

(林田)観る方によって形を変える作品だなと思ってます。なので、ただそこに責任を持って立っていたいなと思います。何の作品に見えるかによって、逆に今のご自身が見えるような作品ですね。台本を読んだ私もそう思いますし、観てくださった方にもそういう風になればなと思っています。

(山田)改めて思ったのが、自分が今後作っていく側にならないといけないなっていうのを強く感じました。だからこそ食わず嫌いみたいに一人で観に行くのが恥ずかしいとか、難しそうだからいいやとかそういうのじゃなく、色々試してほしいです。自分の足で来て、体感して、新しい考えや元々自分が思っていたけど、声には出せなかったことを考えたり、そういう風に変化していただけたらいいなと。年齢関係なく、皆さんが思ってくれるような作品をキャストの皆さんとつくっていけるように頑張るのでぜひたくさんの方に来てほしいです。

(鈴木)自分自身でも経験から色んな事を考え、結果として観る人を限定しない作品になってると思います。このコロナ中に衝撃を受けた演出家さんがいて、その方のおかげで今私がここにいて、舞台「土の壁」に対する思いっていうのがすごく強くて、この作品にかけているものがすごく強くて、最後まで逃げたくないなって思っています。個人的には自分の演出脚本人生として最高の作品を出すつもりで今稽古をやっていて、それに応えてくれる素晴らしい役者さんたちと一緒にできていることがとても嬉しいので、出来上がる作品を観に来てほしいなと思ってます。

(來河)僕らの世代って、若い人に伝える事とか行動してもらえるまで物事を伝えるってことを怠っているんだなと思っていて、山田愛奈さんの言葉の引用にはなりますが、「若い世代が食わず嫌いになっている」、じゃあ原因は何?っていうところを僕らが考えなきゃいけないなっていうことを改めて考えました。

こういう意思を持った劇団があって、スタッフがいて、役者さんたちが出演していて、意志を持った演出・脚本があるからこそ意志を持った作品に仕上がっていると思うんです。意志を持っている社会的な作品は今なかなか流行らないっていうのもあるし、とても届けるのが大変なんですけど、ぜひそこにアンテナを合わせていただけるよう試行錯誤して、作品がしっかり届くようにしたいなと思っています。

見どころはもう(鈴木)茉美さんがつくってくれた脚本、そして皆さんの演技、それに尽きるなと思います。

 


 

【お知らせ】

観劇三昧にて劇団アレン座7作品と大正浪漫探偵製作委員会の3作品が期間限定でサブスク配信開始!

初演『積チノカベ』(2019年)の配信もございます!ぜひお見逃しなく!

■オンライン観劇サービス「観劇三昧

■期間:2022/3/1 12:00~2022/7/31 23:59

■配信作品
・劇団アレン座
『空行』(2017年)
『空行』(2018年)
『積チノカベ』(2019年)
『いい人間の教科書。』(2019年)
『秘密基地』(2020年)
『いい人間の教科書。』(2020年東京公演)
『いい人間の教科書。』(2020年大阪公演)

・舞台『大正浪漫探偵譚』シリーズ
『大正浪漫探偵譚-六つのマリア像-』
『東堂解の事件録-大正浪漫探偵譚-』
『大正浪漫探偵譚-万華鏡への招待状-』

■ご視聴方法
オンライン観劇サービス「観劇三昧」のスタンダード会員にご登録していただくとご視聴可能です。(ご登録には月額1,045円(税込)がかかります)

☆詳しくはこちら→【観劇三昧~スタートガイド~】新規会員登録の方法

 


■劇団アレン座(Allen suwaru)

劇団アレン座(Allen suwaru)は、時代の流れを下敷きに置き、その大きな流れを受動的に受けざる得ない人間。空間に産まれるその人と人のやりとりから、思想から、産まれる不飽和な物の正体を表現する事を目指す。私達は電力不足の炭素の集合体(不飽和化合物/allene)だからこそ、あらゆる人々と支え合い、結合を起こし、過敏な反応を起こす、スリリングで脆く、不確かな「人」を通して、輝く固い作品を送り出す事を目指す、來河侑希主催の劇団。

 

あらすじ

それは、原子力発電所の事故から起こった。

地下を選んだ人々。

地上に残った人々。

『神の審判』から20年・・・。

 

土の上に住む樹は、

毎日友達とくだらない動画を見て笑っている。

SNSを適当に見て、メッセをして、

暇を潰している。

タイムラインで流れてくるニュースに嫌気がさす。

母さんに端末の使いすぎを怒られる。

母さんはいつも二つの鍋を使う。

夜に家を抜け出して、星空の下で端末の光を見る。

そんな日常。

彼らの日常。

私たちの、日常

 

【公演情報】

劇団アレン座第七回本公演『土の壁』

※公演情報詳細→舞台「土の壁」

■日程
3/9(水)   18時

3/10(木) 13時/18時

3/11(金) 13時/18時

3/12(土) 12時/17時

3/13(日) 14時

■会場
すみだパークシアター倉

■チケット
【全席指定席】

プレミアム前方シート 6,500円(税込)

一般指定席 4,500円(税込)

カンフェティにてチケット発売中

■演出・脚本
鈴木茉美

■出演
小野翔平 林田麻里 山田愛奈 塚越健一(DULL-COLORED POP) 來河侑希(劇団アレン座) 山木透 北村優衣 大谷誠 桜彩 松田崚汰 髙野春樹 五頭岳夫
【映像出演】小林麻子 辻しのぶ 春園幸宏 磯野大(劇団アレン座) 栗田学武(劇団アレン座)

STAFF

演出・脚本:鈴木茉美
舞台美術:小池れい
舞台照明:大平智己(ASG)
音響:川⻄秀一(Lucky Jr.sound)
映像:浦島啓(colore)
映像制作:御調晃司
舞台監督:はじり孝奈
音楽:翡翠(月読レコード)
ヘアメイク:藤本麗
衣裳: 赤井優理香、宮本美咲、小杉英一
大道具:林口奈未(C-COM)
植栽:櫻井忍(C-COM)
小道具製作:多摩美術大学 演劇舞踊デザイン学科 劇場美術デザインコース2年
撮影:木村健太郎(Allen)
題字:鈴木茉美
宣伝美術:Allen、吉岡雅弘
制作協力:島崎翼
主催・制作:株式会社Allen

■劇団アレン座-Allensuwaruー

公式HP→http://allen-co.com/allen-suwaru/

公式ブログ→https://ameblo.jp/allen-suwaru

公式Twitter→@Allen_suwaru

 


 
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