こんにちは、夏風邪で完全に変声期に入りました今村です。
みなさまお待ちかね、劇団インタビューの時間です。

さてみなさま、最近誰かに「好き」と伝えたことはありますか?
もしくは、誰かに自信を持って「●●が好き」と言えることはありますか?

若いころ、それこそ10代のころなんかは、目に入るもの全てが愛しくて、世界が輝いて見えていた時期もあります。
スタッフからは時々「今村には闇が見える」なんて言われますが、それなりに色々な人やものを好きになり、大切にしてきたつもりです。

少し歳を重ねてからは、私は素直に「好き」という気持ちを持つことが減ったように思います。
「好きなんだけど●●がなぁ」とか「私が●●を好きと言うなんておこがましい」とか「いい年して●●が好きなんて恥ずかしい」とか
そういうなんだかネガティブな気持ちがむくむくと出てきてしまう、そんな悪い癖がつきました。

今回インタビューをさせていただいたのは、自分の「好き」という気持ちにどこまでも正直で真摯に向き合う方。
好きなもののためになんでもできる、と言い切ることができるのは、とても勇気がいることです。
だけどきっとこの方は、本当になんでもするのだろう、そんな気にさせてくれる方です。

 

■劇団突撃インタビューって?

【観劇三昧】とつながりが深い、噂の「あの人」に観劇三昧が突撃インタビューします!
俳優/脚本・演出家/劇団代表など、普段は舞台の上でしか見ることができないあの人の、
なかなか聞けない本音や裏話、演劇に対する想いを存分に語っていただきます。

これを読めばもっと劇団が好きになるかも?知らない劇団なら、知るきっかけになるかも?
そんな、日常にちょっとしたワクワクをお届けする新コーナーです。

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本日のお相手は…

DOOR 河口円さん!!

■河口円(かわぐち・まどか)

1975 年 8 月 13 日生まれ、大阪出身、B 型。
OL 時代経て大阪ミュージカルスクールステージ 21にて紅萬子氏より演劇を学ぶ。
その時に演劇アシスタントをしていた渡辺晃氏が立ち上げた劇団「atelier THANK-X」に入団。
1994年から2002年5月まで同劇団で役者として活動。

以降は劇団制作を経て劇団プロデューサーとして 2008年まで在籍後、退団。
以後、小劇場という枠にとらわれない企画を模索中。

退団後、フリーランスに大阪の小劇場で演劇制作として活動。
2011年4月「オトナの女性の明日がほんの少しだけ前向きになれる企画」として、
個人制作プロデュース「DOOR」を立ち上げる。

現在、独身。限定社員をしながらの兼業演劇人。

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Twitter:@madokawa
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■DOOR

オトナの女性の明日がほんの少しだけ元気になってほしい。をコンセプトに舞台公演をプロデュースしています。

プロデューサー:河口円

DOOR プロデュース①:「マネキン」2011 年 3 月
DOOR プロデュース②:「女子芸人」2014 年 8 月
DOOR プロデュース③:「ドロップキック・シスターズ」2015 年 3 月
DOOR プロデュース④:「父が愛したサイクロン」2016 年 6 月
DOOR プロデュース⑤:「サンセットバラード」2017 年 8 月
DOOR プロデュース⑥:「ピタゴラスのドレス」2018 年 9 月予定

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公式 HP:https://tobirawoakeru.jimdo.com/
Twitter:@door_tobira 
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演劇を始めたきっかけは?

ーでは早速ですが、河口さんが演劇を始めたきっかけを教えてください。

河口さん(以下河口):母親が舞台が好きで、特にミュージカルが好きだったんです。だから比較的小さい頃から、旧歌舞伎座・新歌舞伎座とか、スターライトエクスプレスとか観てたんですよ。小学生とかそれくらいの時期。それで自然に舞台に興味を持ち始めました。

で、小学校の時に転校した先の先生がすごく演劇に対して熱心な先生で、古典のお芝居とかも教えてくれたりとか。
「あ、面白いんだな」と…漠然とやけど。

中学は演劇部がなかったんですね、私、どうしても演劇がやりたかったんですけど、無理で写真部にいました。(笑)
高校進学したら演劇部の顧問の先生が凄く熱心で。いわゆる「小劇場ブーム」みたいな時代やったから、第三舞台、キャラメルボックス、遊眠社、扉座、とかを先生が自費で連れていってくれた。だからその時が一年間に何百本観たか。

ーうわあ、うらやましい環境…!

河口:でしょ?(笑)母親のきっかけが一番最初やけど、なんか舞台を勧めてくれる人が人生にポイントポイントにいました。だから自然と植え付けられていくって感じ。だからラッキーやったんやと思う。

ー好きな人にとっては凄く恵まれた環境ですね。

河口:うん。なるべくして好きになったんやろなっていう感じ?

ーなるほど。で、実際に演劇を始めたのが高校生の演劇部、だったんですね。

河口:そうですね。ちゃんと何かをし出したのは高校演劇の3年間ですね。

 

俳優から、プロデューサーの立場に変わった理由は?

 

ー河口さんは劇団に所属されたころは俳優をされてましたが、高校の時も俳優だったんですか?

河口:はい。演劇部でも劇団でも俳優から始めました。

ーその後、劇団の制作を経て今はプロデューサーという立場に移行した理由は何かありますか?

河口:実はいっぱい色々変わってて(笑)高校生で役者をしてて、卒業したら就職したんですけど、本当に演劇の勉強がしたくてステージ21っていう学校にも行きました。そこで、インストラクターをしてる人がいてて、その人が立ち上げた学校内の劇団に入って…そのあと外でも頑張って行きたいって「atelier THANK-X」に入った。そこで結構ずーっと長い間役者だけしてたんです。

で、途中で…なんか「頭打ち」じゃないけど、あれ?あたしのやりたいことこれなんかな?みたいな。ダメだ~っていう否定的なことじゃないけど、そういう風になってきてた頃に、ちょっと体調を崩したんですよ。

そうやって悩んでる時期と、体調崩してる時期が重なって。これはちょっとあかんわと思って、一回舞台降ろさしてください、ちょっと役者辞めようと思うんですって言って、主宰の方に相談したりしたのが、きっかけやったんかな。
多分年齢的なもんやったと思うんです。もう限界ちゃうかなっていう。

ーおいくつぐらいの時ですか?

河口:20代後半やったような気しますね。30いくかいかんか。

ー確かに俳優されてる方は一度悩む年齢かもしれないですね、男女問わず20代後半くらい。

河口:うん。結局、小劇場で食っていけないから、なんか仕事しなあかんのやろかと。じゃあ生活はどうすんねんっていう、現実に押しつぶされるような時期やって。演劇が好きで始めたのに、このままやったら演劇好きじゃなくなる。これはあかんっていうような感じになったんですよ。

で、役者辞めるには辞めると決めた。じゃあ何したらええねんと。白い紙出してきてパーって書き出したの、実際に紙に字を書いて。「照明」とか「音響」とか「制作」とか書いたんかな。色々書いて、照明や音響は学校行ったりする専門知識が必要やから、出来へんなーとか(笑)

その中で唯一あたしがやっていきたい方向性と合致したのが「制作」やったんですよ。
その頃に、お客さんに送るDM作ってたのが私やって。で、公演の時に「いらっしゃいませ」を言うのが好きやったんですよ。
一番最初にお客様をお迎えしたいという気持ちがすっごい強かったから、あ、あたしがやりたいのはこれや!ってなって。
何にも分からずに「制作やります!」って言った(笑)

ーそれで、「atelier THANK-X」の劇団付き制作をされたんですね。それまでは制作の仕事のご経験は?

河口:ない!今考えたら…もう、どんだけ制作舐めてんねんって(笑)

ーそんなことはないでしょう(笑)「atelier THANK-X」の時にも制作さんは他にいらっしゃったんですよね?座付きじゃなかったにしても、依頼したりして。

河口:ううん。ちゃんとした制作さんはほぼついてなくて、もうその時ごとに、公演ごとに…知り合いの人よんで手伝いお願いしたりとか。準備だけして後はお願いしてっていう。今なら分かる…ごめんなさい(笑)絶対大変やったやろうなって思ってて。

ーそれは、制作業を普段やってる方じゃなくて?

河口:やってた方もいるんですけど、ほぼやってないんちゃうかなぁ。

ーなるほど。それは大変…

河口:だからね、制作をやろうって決めた、そこからが大変やったんですよ。何をどうしたらいいか分からず。色んなところ色んな人に聞いて。

制作さんって「お客様をスムーズに安全にお迎えして、楽しくお芝居を観てもらって、安全にお帰りいただく」っていうのは共通してるんやけど、やり方も考え方もバラバラ。教えてもらった人と合致するまでがすんごい長かったかな。「この人のこういう所は共感できるけど、これは違うかもしれない。でも方法は教えてもらおう」っていう。もう、CoRich!とかなかった時代ですよ。来場者はリストに手書きとか、怖い時代やった(笑)。

そのあと、一心寺さん(一心寺シアター倶楽)の劇場制作になるんです。で、そこで事務的な業務をやりつつ、並行して劇団で制作したり、他の劇団さんの制作を受けたりして。

どの現場も凄い素晴らしいんですけど、ここは私がおる場所じゃないんじゃないかなって、まだずっと迷ってる時期でした。色んなとこに行って、すごい勉強させてもらって、すごい刺激をうけて。で、巡り巡って一心寺の制作をやってる時に、「自分で現場を作ってやってみよう」ってなって。

ーイチから?

河口:そう。単純にいうと、どこにいっても合わなくて、自分の理想とするものが見つからないのであれば、自分で作ったほうが早いんじゃないかっていう。失礼な話なんやけどな(笑)

ーいやいや、言うのは簡単でも、すごい大変なことですよね。

河口:でも、その気持ちがポンって出てきたんですよ。「じゃあ、やろう」ってなって、自分のデスクで、自分で一心寺の劇場利用受付用紙を出して書いてた(笑)

ー一心寺で仕事しながらってことですよね(笑)

河口:そうそう、すみません一心寺さん(笑)その光景はめっちゃ覚えてる。自分で書いて、自分で受付して「書きましたーよろしくお願いしまーす」みたいな(笑)

ーそれが、初めてのDOORプロデュースですね。思い立ってから公演ができるまでどのくらいかかったんですか?

河口:一年くらいかな。そのスパンは今も変わりないんですよ。「公演をやりたい」って言ってから、実際公演をするまで、あたしのスパンが一年くらいで。そのころに所属してた劇団は辞めたんです。

ーじゃあ、一年かけて一作品、というのをずっと続けられてるんですね。

河口:そうですねー、色々お世話になったのに、結局どこにも合わないから、いや~すんませんって感じ(笑)

ーでも確かに制作さんって、やっぱり会う方会う方皆さん色んな考えがあるのはもちろんですし、今でもだと思いますが、「制作さんを育成するためのスクール」みたいなのってなかなかないじゃないですか。時々WSとかではありますけど。なんで、自分で見つけていくしかないのかなっていうのは強く思います。

河口:ちょうど劇団を辞める辞めへんの話をしてたころかな、制作をしたい、でも分からん。劇団も辞めるかもしれへん。なんかそういう頃に、今でも尊敬している制作さんと飲みに行ったんですよ。で、その方に「円は劇団を辞めたいの?制作を辞めたいの?」って聞かれた。私は「制作をずっと続けたいです、どんな形でも」って答えたんです。「そしたら、力になる」って言ってくれはって。「そしたら、力になる」って言ってくれはって。ずっと悩んでたけど、なんか光が差し込んだような気がして・・・はぁああ~!めっちゃカッコいい!!って思いました(笑)

私は器用ではないので、めちゃめちゃ迷ったあげく、最終的にその方のところに行きついて。私をそういうところに持って行ってくれた人でした。

ー河口さんはすごく作品や、俳優さんや、もちろんスタッフさんにもすごく愛情をかけられてる方だなぁと感じます。
そういった意識の持ち方とかで、影響を受けられたのはやっぱりその方ですか?それとも特にそういうのはなく、ご自身の中にふつふつあるようなものですかね?

河口:その方をはじめ、色んな人に教わりました。 やっぱり作品に対してすごく大切に真摯に向き合ってるっていう皆さんばかりで勉強の日々でしたね。
ただ、そういう面もあるけど、私自身すごくね…「愛情」と同じくらい、なんていうんかな「申し訳ない」っていう感覚があるんですよ。

ー申し訳ない?

河口:うん。私が観たい、私が好きな人達を呼んで、私が好きな言葉で全部やってくださいってお願いして、わざわざ集まってくれてる人たちなので。
なんというか…もう好き…大好きなんですよ(笑)

ーなるほど(笑)プロデューサーの立場を使って、一番自分が観たいものを作ってもらってるっていう感覚なんですね。

河口:そう。作ってくれる人たちだから、物凄く感謝をしてるんです。特に出演者とか、作家さんとか。

これはもう、プロデュースではないんやろな~っていう(笑)やっぱり「ちょっと違うな」って言われることもあるんですよ(笑)たぶんプロデューサーさんって、作家さんが書きたいものを、商業ベースにのせたり「こんな企画するからこんなん書いてくれませんか」ってするんでしょうけど、うちは全く形が違うので・・・(笑)

ー確かにそういう意味では、劇団や劇場がプロデュースしてる作品とか、とはまた違う考え方なのかもしれないですね。

河口:私はプロデューサーというより、DOORのプロデューサーなんです。
だから、ほんまに申し訳な…すみません来てもらってありがとうございますっていう感じなんです(笑)

ーでも、それに共感する人がいるから人も集まるわけですし、お客様も集まるんじゃないかなと思いますよ。お客様が観たいものと、合致した素敵なものを作られてるんだと。

河口:ありがとう。もうね、ほんまに感謝しかないです。土下座してもしたりない。だからこの人達のためやったら、死ぬ以外のことやったら何でも出来るんです。この人達のためやったら。死ぬのはイヤだ、作品を観れなくなるから。それ以外のことやったら何でもする。24時間いつ電話かけてきてもいいし、スケジュールだってなんでも合わせる。だからなんでも言ってください!って言うてる。
…のに、「一緒に頑張ろう」とか「作ろう、大丈夫やって」とか言って声かけてくれたりするから、もうねぇ、あったかくて。だからそんなかっこいいもんじゃない…すいません

ーとんでもない!本当に「好き」っていう気持ちが第一にあるんだなぁって感じですね。

河口:絶対こんなん…おかしいですよねぇ。

ー「好き」という気持ちで動くのは、とても大事なことだと思いますよ。

河口:ありがとうございます。

 

 

新しい公演を行う際、一番初めに決定するものって?

新しい公演を行う際、一年ベースで作品を作られると仰ってましたが、一番初めに決定するものってなんですか?テーマだったりとか。

河口:一番最初はシーン。メインとなるシーンと言葉かなぁ

ー言葉?台詞とかですか?

河口:うーん、テーマ的な事かな。DOORってね、「私」なんですよ。今回(ピタゴラスのドレス)が6回目公演なんですけど、その時に私が思っていることが強く作品にのっています。
観劇三昧さんで配信している「父が愛したサイクロン」やったら、その時期実は父がちょっと病気して。離れて暮らしてる父が私に何も病状を言わないんですね。でも、母には言ってると。なんで言わへんねんやろっていう、娘としての葛藤があって。会っても何も言わない。「大丈夫大丈夫やー」って、
「子供は何も知らんでええ、お前はそんなん知らんでええねん」みたいなことを言われた時に、あ、そっか。<父は私にとってヒーローでありたいんや>っていうのが納得できたんですよ。じゃあ、お父さんがヒーローの話を作ろうってなって。なんかそういう感じ。

ーその年、その時々、今自分が一番抱えてるものを、という感じですかね。

河口:そう。「ドロップキックシスターズ」は…私独身なんですけど、年齢的にね、結婚がどうとかなんとかかんとか…すごい言われてて。いやもう、なんやねん?これどうするねん?みたいな時代があって。だから、「家族会議」をしたいっていう提案をしたんです。
この作品、ちっちゃいカフェでやったんです。コモンカフェ。「キャパが小さいからそこでやる」ではなく「コモンカフェだからできる」芝居をしたくて。だから、絶対に<カフェが舞台>の話。

ー「カフェ」で「家族会議」がテーマだったんですね。

河口:そう、家っぽい距離間の芝居なのでカフェで…。
あとなんでしたっけ?あ、シーンっていうのは…公演の千秋楽までに思いつくんです、次の公演の案が。

ー次の公演の案が!?

河口:そうなんです。だいたい今の現状として。「父が愛したサイクロン」の時ふわぁって出てきたのは、差し入れでいただいたひまわりの花を見ていた時。
是常祐美(シバイシマイ)さんが主演で、ひまわり畑の中に彼女が立ってるラストシーン。「そんなんキレイかもなぁ」って言ったことから始まって次の「サンセットバラード」が。
今回も、前回公演の千秋楽の本番前、役者とわーって話してたんです。その時に、小川十紀子(遊気舎)さんがウエディングドレスの裾を掴んで、汗水流して走ってる姿があったら面白いなーって思いついて、チラシのあのウエディングドレス姿になったんですよ。

ーへぇー!じゃあパッと浮かんだイメージをもとに二時間の芝居を作るみたいな。

河口:そうそうそう。そこからとりあえず形作るんですよ。で、飽きるんです!

ー飽きるんですか!?

河口:(笑)一回飽きて、でももう公演の日は作って決定してるから、絶対にその企画を固めなあかん時がくるでしょ。
何か月か経って、またその案を思い出すんです。ちゃんと思い出せたものが本当に想いの強いやりたいことなんだって決めてて、で、この頃に自分が思ってる話を色んな人に話して、それはこう、それは違うっていうので形を整えていって企画を完成させていく・・・って感じかな。

ーポンと浮かんだ台詞を最後の台詞に言わせたいがために2時間分脚本書く、みたいな方もいらっしゃいますしねぇ。

河口:今回(ピタゴラスのドレス)の場合は、それもあった。ラストシーンに「この人とこの人がこうなってこうして欲しいんです」って発注で脚本家さんに言って。それはまぁ採用になるか分からないけど(笑)…脚本書ける人って、もうなんか凄いなって。

ー確かに。大人数のお芝居とか作られる人とか、頭の中どうなってるんだろっていつも思います(笑)

河口:字が浮かぶのかな?人が浮かぶのかな?私はね、絵が出てくるんですよ。こう舞台やそのシーンが「バーン」って出てくるみたいな。

ー映像派なんですね、多分。それを言語化するのがまた結構難しいですよね(笑)ってなると意思疎通できる人、信頼関係を築ける人っていうのがすごく大事になってきますね。虎本さん(DOOR プロデュース3~6の脚本・演出/ステージタイガー)とすごくいい関係なのだろうな、と。

河口:私はそう思ってます(笑)虎本さんはどうだろう?虎本さ~~ん、私を信頼してくれてますか?(笑)

 

作品作りの前に、俳優と一対一で話す時間を設ける理由は?

ー河口さんは作品の出演者を決定するときに、必ず一対一で対面でお話をしてから話を進めていくとお聞きしました。
凄く大事なことですけど、すごく時間がかかることですし、簡単なことではないと思います。でもそれも続けられる信念っていうのはどこにありますか?

河口:うーん、さっき言った「もうめっちゃ好きっていう気持ちがある」っていうのにつながるんです。
申し訳ないんです。私が考えたものに出てくれる、っていうのが。やっぱりお呼びしている人はベテランさんであり、しっかりした舞台に立つような人達っていうのを分かってて呼んでいるので。申し訳なさとありがたさでいっぱいだから、絶対にご挨拶したい。会って話するというより、ご挨拶をしてるっていう感覚なので、あんまり信念とかは…(笑)とりあえずさ、好きになった人とは会って話してみたい…(笑)

みなさんね、「芝居に対すること」に関して、一対一で話す時と、みんなでいる時に話すことって結構違うんですよ。で、私はこういう考えでこういう風に芝居作ってますって企画書もお渡しするんですね。そのうえで、なんかあったら言ってくださいねって言うと、これいいんちゃうとか、これ分かる!とか、実はこれ思ってて、とかっていう話を聞けたりとかするので。むしろね、楽しい。

ーなるほど、そういう時間は大切ですね。じゃあ練習や顔合わせの時には、必ず河口さんが全員と一対一で話し終わった後っていう感じなんですね。

河口:うん。そうそう。

ーありがとうございます。なんか一人ずつにお話しされるのってやっぱりすごい大変なんやろうなぁって。河口さんも忙しい方なので、時間をどうやって作られてるのかなぁって。

河口:(かぶせ気味に)忙しくないです!

ーえ、本当ですか?

河口:これ、書いといてください、忙しくないって(笑)あたしは忙しくないんだ!(笑)本当に忙しくない。
あの、私DOORをするために生きてるので、DOORが何かあれば、それに合わせて生活が変わるだけなんですよ。
だから、あたしが働いたりとか、こうやって色々なところに行ってるのもDOORのためなんですよ。なので、何も(笑)

ーさすが。分かりました、書いておきます(笑)河口さんは、DOORのことを考えてない時期ってあるんですか?

河口:終わったらもうめっちゃ離れます。もういっとき…一ヶ月か二ヶ月劇場に観劇にもいかないし、資料もパタパタって閉じて、パソコンも開かないし。完全に演劇から離れます。

ー一回リセットみたいな感じですね。だいたい一、二ヶ月ぐらいですか?

河口:…うん!ただ、だんだんね、う~~~~~んってなる(笑)

ーやりたいなぁっていうのが。

河口:そうそう。なんかよだれが出てくるんです(笑)

ー本当にお好きなんですよね、多分。

河口:そうなんやろうなぁ。だって6回もDOORをするなんて思ってなかったですもん。

 

観劇三昧で配信している作品の見どころについて

ー観劇三昧では「ドロップキック・シスターズ」と「父が愛したサイクロン」を配信させていただいております。

河口:お世話になってます。

ーこの二つの作品について、見どころとか、「この俳優さんのこの顔観てほしい」とかいうのがあれば教えてください。

河口:「ドロップキック・シスターズ」は虎本さんの一回目の作品なんです。見どころはね、主演の中道裕子さん。私が、それからのDOORを作るきっかけになった女優さんなんです。すんごいんですよ、存在感。
皆さんもちろん良かったんですよ?良かったんですけど…中道さん、そこにいるだけで目がいく。吸い込まれるっていう。
で、中道さんの存在感とお芝居が凄さでリアルな光景になってきて…。
まぁものすっごい大先輩なんで、出てもらっただけでも凄いんですけど…で、それ見た時に、あ、私はこういうリアルな作品をつくっていきたいって思ってるんや、って思いました。それはすごい衝撃的というか。あの作品があったから今があるねんな~って思っています。

ーなるほど。とにかく中道さんの存在感は必見ということですね。

河口:で、映像的にも面白いんです。普通に前から撮ってるのと、上から撮ってるのを組み合わせてるんです。
やっぱりコモンカフェでしか出来ない芝居っていう感じで作っているので、それを楽しんでいただけるかなぁていうのはありますね。

ー映像作品としての見せ方が面白いのは、あとから観ても楽しいですね。

河口:あとはね、家族会議のシーンがあるんですよ。テーブルを囲って。
その時とかもう、一緒に会議してる気分になる(笑)

ーちょっと緊張感をもちながら観られる感じですね。

河口:え?え?そうなん!え?え?あっそうなん、みたいな(笑)

ー河口さんは台詞も後のシーンも知ってるのに(笑)

河口:いつでも初めて観た感じになれるのが得意技です。(笑)えと…是常さんがDOORの最初の出演なんです。で、それを初めて観てくれたのがうえだひろし(リリパッドアーミーⅡ)くん。「すごい良かったよ~」って知り合ったきっかけにもなって、前回公演出演してくれて今回も出演になったんです。

ー色々なご縁も繋いでくれた作品なんですね。

河口:そう。だからなおさら思い入れが深いですね。「ドロップキック・シスターズ」は。

 

「ドロップキック・シスターズ」

 

ーなるほど。「父が愛したサイクロン」のほうは?

河口:ドロップキックキックのカフェもそうでしたけど、不思議な形の中で芝居するのが…観るのも、作ったりするのも好きで。で、とりあえず対面舞台をしたくて。
スペース9さんが対面舞台を劇場企画してるっていうことでやらせてもらいました。長方形の舞台を挟んで客席があるので、縦長の芝居なわけですよ。だから、観る角度によって、感じる役者の表情が違うわけですよ。…まぁ映像は一個ですけどね(笑)

ーそうですね(笑)それは生で観れる特権ですね。

河口:作品は父と娘の話で…実際に息子さんが生まれた…虎本さんが「お父さん」で、私は「娘」側なんですよ。
娘側が出した企画を、お父さんである虎本さんが作ってるんですよ。だから、そういう様々な立場の人の面が見えるんですよ。
家族で観てくださる方が何組かいらっしゃって、娘さん側からも涙ぼろぼろ流してるし、お父さんもお母さんも…あれはずるいわぁって言ったりしてるのがすごく印象的。

ー観る人の立場によって、感じ方が変わってくるんですね。

河口:私なんか、通し稽古も観てるし、ぜ――――んぶ内容知ってるんですけど、ずーっと泣いてました(笑)本番もずーっと泣いてましたよ。そうそう、この作品で主演の早川丈二さん(MousePiece-ree)がDOORに初めて出演してくださって。

ー今回(ピタゴラスのドレス)も出られますよね?

河口:はい。出てくださるんです。
えと、サイクロンでは、観てくれる人全員が、丈二さんの演じるお父さんを好きになる芝居にしてほしいって虎本さんにオーダーをしました。
そうしたら見事にそういう風になった。早川丈二さんってすごい色んな所に出てらっしゃいますけどDOORプロデュースでは「あ、こんな顔も見せるんや」っていうイメージになると思います。

ーなるほど。早川丈二さんを好きな人にはもちろんですし、知らない人には是非観て好きになってほしい作品ですね。

河口:なってほしいですね。あとは三原悠里ちゃん。少女から女になる間の時期の年齢だったんですよ。で、役的にもそういう役で。ちょうど収録されてた回が一番良かったですね。もうあの子の台詞とか、動きとか、表情とかねぇ、一言一言が、泣ける。

ーあの時が18歳ぐらいですね、本当にちょうどそういう時期ですね、まさにこう、リアルな等身大の娘を演じられていたなぁと思います、本当に。

河口:まだまだ語れますよ(笑)御意ちゃん…今はAGATAさんか。彼女は、普段歌とハープとかやってらっしゃるんですけど。歌ないです!音楽もハープもないです!ってお伝えして、チラシ撮影のときに初めて「あ、主役ね」って言って(笑)

ー衝撃!

河口:へええぇえええ!?って言われました(笑)実はめっちゃ不器用な子やけど、不器用な子が一生懸命生きる姿ってものすごくおしいんですね。あれはもう…彼女しか出来へん役なんやなぁって。
次は是常さん。是常さんは二役やるんですよ。なんか「女優」って感じでした。

ー女優。

河口:あの魅せ方はすごいです。まさに女優。
で、丈二さんと、是常さん二人のシーンがあるんです。無音で…無音なんですけど、こう固唾を飲んでずーっと観れるシーンがね…すごくよかったです。そのシーンは音楽もないし、台詞もなんにもない。二人ともゆっくりなんですよ、動きが。
それは、二人が作品の意図をとか全部をくみ取って、ちゃんと力のある二人だからやってくれたって思う。
言葉がなくて、それでも観れるシーンって、本当に力のある俳優さんしか無理なんですよ。

ーそうですよね。

河口:あと、小川十紀子さん。とこさんは、この作品で役の若いときと、現代を演じてらっしゃるんですけど…かわいいんです!!
丈二さんとのシーンがあるんですけど、もうこれは観ていただきたい!!かわいいんです!!!!!
ベテランさんなんですよ?もうねなんか…もう…かわいいしか言えない(笑)
稽古の時に丈二さんととこさんのシーンがあって、「はい(スタートの合図)」って言った瞬間に…なんにも打ち合わせもしてないのに、ぱぁーって二人で出来上がっていくんです。そらぁベテランやもんなって思うんです。でもね、すごく楽しそうなんですよ。
はぁめっちゃええなぁ、めっちゃええなぁって思って、で、そのとこさんが、御意ちゃん演じる女の子に語り掛ける最後の台詞とか…それがものすごく愛に溢れてあったかいんですね。…あたしこの作品好きすぎますね?

ー大好きですね(笑)ありがとうございます。めっちゃ愛を語っていただきました。

 

「父が愛したサイクロン」

 

今後の目標や、目指すもの

河口:DOORが続いていけばいいなぁ、とは思う。で、東京にみんなを連れていきたい。地方公演がしたいかなぁ。
サイクロンの再演とかもしたい。
逆に漠然とした夢やったら、「大阪でこんないい芝居があるから地方や東京から観に来てくれる」みたいな感じの芝居が出来ればなぁって思っています。

ーなるほど。河口さんの好きなものを物凄く詰め込んだ作品を、一人でも多くの方に観てもらいたいっていう気持ちですかね。
東京に行きたいとか、地方から来てほしいとかっていう気持ちはそれなのかなぁって。

河口:もちろん好きなものを詰め込んでるんですけど、でも「独りよがりにならない」というのは絶対に頭に置いています。
だから色んな人に話を聞いたりするんです。自分が思っていることが人からどう思われているかを確認するんですね。
そもそも、私は脚本を書けないし、私の案が理解されてるという脚本であるなら書かれたものには極力変更を求めません。
私が出す案と作品の世界とは全く別ものなので、私の意図を理解してくみ取ってくれる、そういう作品を作ってくれる人達がいるっていうことは、守りたいっていうか、大事にしています。

今回の作品「ピタゴラスのドレス」にも繋がってくるんですけど、んと、私、みんなが私の周りに集まってくれるってことがすごく不思議で。すごく信頼してくれてて、そして協力的に「頑張ろう」って言ってくれるんです。何回か出てくれた人とかは「また出たいです」って言ってくれる。それは、すごく嬉しいし感謝するんだけど、どっかで「え、ほんまにそう思ってる?」みたいなのが出てきて(笑)
性格やねんな、多分それは。みんなを疑ってるわけじゃないねんけど、すごく自信がないんですよ、私。

もうびっくりするくらい自信がない(笑)でもなんか、とこさんが「頑張ってほしいって思うよ、好きなんは別に理由なんてないよ」って、言ってくれて。
それで、私もこの人達のことが好きやから。そういうのをちょっと受け入れたんですよ。「ありがたいな、よし、頑張ろう」にしたんです。そしたらちょっと気が楽になったんです。「これってもしかして、私幸せなんちゃう?」って思ったんです。
そういう状況?環境が。なんかありがたいなあって感じ。幸せやなあって。

ー自分を好きだと言ってくれる人を信じるのって、すごく勇気が要りますよね。

河口:自信がない人も、自分なんてって思ってる人も、世の中に絶対いっぱいいると思うんですよ。私がそうやから。
でも、実は誰かが気にしてくれてて、実は隣に誰かいたとか、言葉をかけてくれる人がおった。
傍におらんけど、遠くからあなたのことを思ってくれる人がいる。
そういう日常をちょっと振り返ってみてって。そういう瞬間あったんちゃう?って。
それを思い出せたら、明日を迎える元気が少しだけ…出るんちゃうかなぁって、思うんです。あれ、なんか泣きそう(笑)

ー分かります。私も聞いてて泣きそうになりました(笑)

河口:別になんかあった訳じゃないけど、この話するとね、勝手に涙が出てくるんですよ。
…だからこの芝居を観たから幸せになれますよ~ってことではなくて「ピタゴラスのドレス」を観たことによって、日常を振り返る…ちょっとそういうきっかけになったり、誰かがそばにおったり、大切に思ってくれる、大切に思う、そういう「幸せなんやな」って思えるきっかけになれればなと。
「今の私は幸せじゃない、幸せじゃない」って思うんやったら、明日からこの芝居を観たことをふと思い出して「こんなんあったなぁ」っていうものにしてほしい。
私はね、私の人生に関わってくれた人が皆、幸せになったり、元気になったりしてくれたらね、それでいいなって思うんです。その方法が私の場合、演劇やっただけで。

そんなことが、いつまでも続いていけばいいなと思います。

ーありがとうございました。

【次回公演】
DOORプロデュース⑥

「ピタゴラスのドレス」

作・演出/虎本剛(ステージタイガー)

【STORY】

夏川幸子(42)は、交際していた16歳年下の乙部翔太(26)との結婚を目前に姿を消し、実家の兄が経営する民宿「なつかわ」に逃げ込んでいた。同郷の友人達と過ごしていると・・・居場所を突き止めた翔太がやってきてしまう。

「戻ってきてください。あなたに割り切れない思いがあるなら、僕がわりきってみせます。それまで帰らない」と息巻き、宿泊し続けることに。
その上、翔太を追いかけて翔太の姉もやってきてしまう。

幸子が逃げ出した本当の理由は?

結婚はどうなってしまうのか?

これからの人生に迷う幸子と取り巻く人々の物語を通して、オトナ女性の「幸せの在り方」を問う作品です。

 

【出演】

小川十紀子(遊気舎)
飯嶋松之助(KING&HEAVY)

是常祐美(シバイシマイ)
うえだひろし(リリパットアーミーⅡ)
猿渡美穂(宇宙ビール)
澤井里依(舞夢プロ/EVKK)

早川丈二(MousePiece-ree)

 

【日時】

2018年

9月6日(木) 19:30
9月7日(金) 15:00 / 19:30
9月8日(土) 13:00 / 17:00
9月9日(日) 13:00 / 17:00

 

詳細情報:https://tobirawoakeru.jimdo.com/

 

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