今回紹介するのは太宰治作品をモチーフにした物語。太宰さんといえばどこかネガティブで影のある作風。共感した人は多いのではないでしょうか。
しかしその気持ちを「わかるよ」と太宰さんに言ったところで彼はやや伏し目がち(予想)にこちらを向いて「君に何がわかるのさ」と言われてしまうでしょう。(予想)
そのいい意味での暗さを存分に味わえるのがご存知「人間失格」。
いい本です。部屋の隅っこでやや照明を落として読みたくなる。
自虐はどうしてこうも気持ちがいいのか。
どうしてこうも共感できることばかり書いてあるのか。
共感しちゃったネガティブボーイないしガールの皆さん、「Human Lost」はご存知でしょうか?
「人間失格」の元になった一作。一筋縄ではいかない難解な作品です。
そんな「Human Lost」が今回のモチーフです。
果たしてブルドッキングヘッドロックはどのように料理したのでしょうか。
日本橋店より、武田でした。
ブルドッキングヘッドロック
【おい、キミ失格!】
【作演出コメント(公演当時のフライヤーより)】
物語は4年前に遡る。
2010年5月、我らがブルドッキングヘッドロックは、三鷹市芸術文化センター星のホールに於いて、『Do!太宰』なる作品を上演した。文字通り“太宰”をモチーフにした演劇だった。しかし、三鷹市芸術文化振興財団さんが毎年催している恒例の、“太宰治作品をモチーフにした演劇”という企画に参加したわけではなかった。
そう、勝手にやらせていただいた。
その年に、真っ当に依頼を受け、“太宰治作品をモチーフにした演劇”を上演された劇団さんにはご迷惑をかけた。なんせ公式の“太宰”は6月。こっちは5月。先にやるだけでも随分だが、それをかなり近い時期にぶつけた。どっかで誰かが我々を公式と勘違いしたかもしれない。向こうの劇団さんが、勘違いした誰かによって、ブルドッキングヘッドロックさん♪、と呼ばれる不条理を味わったかもしれない。いい迷惑だ。そう言えば、今こうして書いているように『Do!太宰』のチラシにも私のコメントを載せたのだが、そこに、その劇団さんのことを書こうとしたら、やんわり止められたこともあった。それはそうだ、得体の知れない集団がたいした理由もなくどんどんと絡んでいくのだ。気味の良いものではなかっただろう。本当に申し訳ありませんでした。しかし、三鷹市芸術文化振興財団の森元氏が、我々を許してくれてしまったのだからしかたがないのではないでしょうか。そうだ、森元氏が許してしまったのだ。我々もどうかしていたが、氏もどうかしていたのだ。
そして今年。正確には去年だが、森元氏から連絡があった。氏は言った。「今度は正式に“太宰”をお願いします(笑)」と。
いよいよどうかしている。4年前、勝手に太宰をやるだけにとどまらず、想定を遥かに越える上演時間を叩き出し、森元氏を劇場の守衛さんの元へ走らせ、頭を下げて回らせたのは我々ではなかったか。普通、こりごりなのではないのか。むしろ楽しそうに、(笑)なニュアンスでもって依頼してくるとは一体どういうことなのか。
私は想像する。これは、氏なりの報復なのではないかと。おまえたち、もう一回やれと言われたら焦るだろと。前回けっこう太宰作品をたくさんぶちこんでいたし、もうネタが無いだろうと。こちとら、あの時の大変さを忘れたわけじゃないんだぞと。困れ!と。…なるほどそう言うことですか。ただでは転ばぬ氏というわけだ。確かにご明察、もはやネタは無い。4年前は、まだまだ何杯も“太宰”をおかわりできる気がしていた私だが、今、冷静に振り返れば、アレはアレですっからかんになるほど、私なりの“太宰”を注ぎ込んだ作品だった。当時、凄まじい勢いで全太宰作品に目を通し、猛烈に一夜漬けした私なりの太宰は、今や、風とともに去りぬで見る影も無しだ。しかしだがしかし、物語を終わらせるわけにはいかないのだ。我々と三鷹市芸術文化振興財団の物語は、4年の歳月を経て、新章へ突入したのだから。
というわけで『太宰』をやる。だがやはり、我々の抗争に巻き込まれた形の太宰氏のことを思うと、大変忍びない。愛されたいし褒められたいし貶されたいし許されたいし、でお馴染みの氏である。人も自分も巻き込んで、のたうち回って見せた自分が、まさかよくわからないおじさんとよくわからない劇団の抗争に巻き込まれ、グッチャグチャにされようとは思いもよらないだろう。
「おいキミ、ネタが無いなら、もう一回全作読み直しなさい。絶賛発売中だよ。」と言いたい氏のはずだ。しかし氏よ、今回は読まない。すでに『HUMAN LOST』をイメージすることを決めている。あなたが“きちがい病院”で綴った、まったくもってワケの分からないあれだ。あなたの錯乱に触れた当時の私は、最後まで目眩がしっぱなしだった。そう、あの目眩を、氏に喰らわせてやろうという企みなのだ。あ、ここで言う氏は森元氏の方の氏だ。つまり、氏の錯乱でもって、ああ、この氏は太宰氏の方だが、その氏の錯乱でもって氏をも錯乱させ、ああこれは森元氏の方だ、氏を錯乱させて、実は太宰でもなんでもないそれを上演していることにも気づかないくらいに錯乱させてしまえば、ネタが無くったってなんとかなるのではないかという錯乱した考えがあるのだよこの私には氏よ!
これはなかなかにしびれるミッションだ。“太宰”がモチーフだという企画を、“太宰”ではないネタでもって駆け抜ける。いつ、笛を鳴らし、レッドカードを持った氏が追いかけてくるかわからない。観客の皆さんだって目を光らせていることだろう。だが恐れてはならない。怯んではならない。負けられない戦いがそこにはある、ような気がしないでもないのだ。あ、追いかけてくる氏とは、両方だ。森元、太宰両氏が笛を吹き吹き追いかけてくる。…まずいな、これはずいぶん面白そうじゃないか。
喜安浩平
【キャスト】
西山宏幸、篠原トオル、永井幸子、岡山誠、喜安浩平、川本成(時速246億)、竹井亮介(親族代表)、森谷ふみ(ニッポンの河川)、筒井俊作(演劇集団キャラメルボックス)、傳田うに(劇団鹿殺し)、小園茉奈(ナイロン100℃)、竹内健史、小笠原健吉(新人)、浦嶋建太(新人)、葛堂里奈(新人)、鳴海由莉(新人)、二見香帆(新人)
【スタッフ】
作・演出:喜安浩平
舞台美術:長田佳代子/照明:斎藤真一郎(A.P.S)/音響:水越佳一(モックサウンド)/舞台監督:田中翼/演出助手:陶山浩乃/音響操作:照山未奈子/宣伝美術・宣伝写真:高倉大輔(casane)/映像:篠原トオル・猪爪尚紀/衣裳:山口かほり/イラスト:永井幸子/WEB:寺井義貴/制作協力:J-Stage Navi/協力:ダックスープ/KNOCKS,INC./萩本企画/イマジネイション/クィーンビー/オフィス鹿/キューブ/ナイロン100℃/親族代表/演劇集団キャラメルボックス/劇団鹿殺し/主催:(公財)三鷹市芸術文化振興財団/企画・製作:ブルドッキングヘッドロック
【おい、キミ失格!】
再生お願いします。と書くとブログっぽいですね。
いや、まずは観てほしいんですよ。ホント。3分でいいですから。
前回公演『田園にくちづけ』の際には、下北沢店にてチケット手売りイベントも行われました。
【チケット手売りスタート!】
現在、猪爪・小笠原・はしに加え、瓜生さんも来てくれております!ヴィレッジバンガード向かい2Fの下北沢観劇三昧にて、19時頃までおりますので、ぜひ遊びにきてください!!#田園にくちづけ #BHL pic.twitter.com/8s02sice9Y
— ブルドッキングヘッドロック (@BHL_BHL_BHL) 2017年9月2日
次回の公演も楽しみですね!!
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DVD・台本を店舗で販売中です!
劇団のオンラインショップもあるみたいですよ!
手に取って見たい方はぜひ店舗にお越し下さい。
個人的にDVDの裏面に潜んでいる
この太宰さんがお気に入り。
「あなたが失格にするんかい!」「半ズボン!」とか突っ込みたくなるゆるさです。
ところで、ブルドッキングヘッドロックってプロレス技なんですね。
どんな技なのか調べてみました。
カウボーイ・ボブ・エリスのオリジナル技。
相手の頭部をヘッドロックに捕らえて助走をつけて両足を前に投げ出すようにジャンプして相手の首に体重をかけることで相手の体を前のめりに倒れ込ませて尻餅をつく形で着地すると同時に相手の顔面を叩きつける。
この場合のブルドッグは犬種のことではなく、動詞のBulldog(牛や鹿の角を掴みねじり倒す)から由来している。
(Wikipediaより)
ひいい。
プロレス技を冠するこの劇団、どのような力強さを見せてくれるのか。
今後も楽しみです。
【ブルドッキングヘッドロック】
「グロテスクな日常に、ささやかなおかしみを」
不安、悪意、狂気といった現代の人間が抱える様々な生き苦しさを描きつつも、
その生き苦しさ故に発生してしまう、
ささやかな”おかしみ”に着目した舞台作品を作り続けている。
Twitter:@BHL_BHL_BHL
公式サイト:http://www.bull-japan.com/
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