~現在大注目の劇団の立ち上げから今に迫る~
こんにちは!
観劇後は必ず最寄りから一駅歩く、観劇三昧スタッフです。
弊社提供アプリ「チラシ手帖」に掲載公演団体の方々のお声を、
インタビュー形式でお届けするシリーズ、チラシ手帖 団体紹介スペシャル☆!
観劇三昧だからこそ聞ける劇団や公演のお話、今回もぜひ楽しんでいってください📖
今回はシリーズ第5回目!
さあ、今回のご紹介は…
「ウンゲツィーファ」より主宰・本橋龍さん!
【ウンゲツィーファ プロフィール】
演劇作家・本橋龍を中心に活動する演劇集団。2024年で活動10周年を迎える。
リアルな日常描写と幻想の世界をシームレスに行き来する演出と、何気ない台詞から人物の人生を浮かび上がらせる会話劇が魅力。
いつも何かから少しズレてしまう不器用な人々の、生々しい葛藤や矛盾と、日常の隙間からにじみ出る夢想や希望を「生活臭のする幻想」として描く。
代表作『動く物』が平成29年度北海道戯曲賞大賞を受賞し、以降も2年連続で優秀賞を受賞。
『湿ったインテリア』が「CoRich舞台芸術まつり2025」グランプリを獲得。
【本橋龍(もとはし りゅう) プロフィール】
筑波大学付属坂戸高校で演劇と出会う。ウンゲツィーファの前身となる「栗☆兎ズ」を立ち上げ、その後「ウンゲツィーファ」を設立。全ての作品の脚本、演出を担当する。
リアルな日常描写と潜在意識にある幻象を、ひとつの舞台空間で重ね合わせ、複数のシーンやキャラクターが交錯することで、新たな景色や感情を生み出していく「撹拌(かくはん)される会話劇」として独自の作風を確立。シームレスな場面転換の美しさや台詞の巧さが評価されている。
劇団や本橋龍さんについて詳しく知りたい方はこちら
昨年の「CoRich舞台芸術まつり2025」のグランプリ受賞や秋田での地方公演などその存在感を強めているウンゲツィーファ。
今回はその作品作りの原点からこれからのことまで、じっくり掘り下げてみたいと思います。
『自分って最低最悪』を『朝起きたら虫になってました』に
まずは劇団の原点について。
そもそも演劇を志したきっかけは何だったのでしょうか。
(以下、本橋)
僕は中学時代にいじめられていたことがあるのですが、いじめを回避するためにいじめっ子たちを笑わせてピエロを演じることがありました。その時に身に着けたひょうきんさみたいなものが、演劇部で素直に評価されて楽しんでもらい、心から拍手をもらえた経験が自分の中の大きな原点としてあります。
心の底から「何者でもない」と感じていた自分を、何者かのように扱ってもらえたのが自分にとっての演劇でした。「演劇を選んだ」というより「演劇だけできた」という感覚で今に至っています。
――自分が身につけてきたものが、拍手をもらえる「表現」へと昇華された瞬間……。その時に感じた「何者かになれた」という感覚こそが、本橋さんの創作の源流になっていたのですね。
そんな本橋さんが、今の劇団名である「ウンゲツィーファ」という言葉を選び、作品の捉え方に生じた変化などについても、ぜひ詳しく伺いたいと思います。
8回の公演を経て、現在の「ウンゲツィーファ」という名前に至ったと拝見しました。
この名前に辿り着いた経緯や、名前に込められた意味を教えてください。
『変身』は、主人公が朝起きたら虫になっていたというお話なんですが、日本語の翻訳だと「虫」と表現されている言葉が、ドイツ語原文だと「Ungeziefer」と書かれています。
Ungezieferは「最も汚らわしい生き物」というような意味を持つ言葉なのですが、それを知った時、それまでは気持ち悪いと思っていた物語が、自分の中で腑に落ちたというか、すごく希望を感じるものに変化したんです。
「自分はウンゲツィーファだ」と思う気持ちは、演劇に出会う前の自分の気持ちと近く感じました。そして、カフカの変身の中で、ウンゲツィーファ(虫)になった主人公は周りから特段驚かれるようなこともなく扱われていく。自分にとって演劇は現実と虚構の境目がないもので、そのこととも重なるように感じました。
――単なる「虫」ではなく、最も汚らわしい生き物「Ungeziefer」という強いマイナスの言葉に逆に希望と納得を見出した……その感性こそが、本橋さんの持つ作家性であり、今の劇団の持つ、説得力の源なのだと理解が深まりました。
本橋さんにとって非常に大きな転換点だったのだと感じますが、前身の名前から今の「ウンゲツィーファ」に改名されるまでは、どのような道のりがあったのでしょうか。
栗☆兎ズの時は、極私的な自分の周りの話しが多かったのですが、ウンゲツィーファになってからの作品は、もっと普遍的なイメージがあります。まさに、「自分って最低最悪の生き物です」を「朝起きたらウンゲツィーファになってました」に変換したような感じです。
――作品の中に登場した劇団をそのまま劇団名になされたんですね!
舞台と客席、虚構と現実その境目を持たない劇団らしい名前の決まり方で素敵です。
そんな本橋さんならではの演劇観は劇団の俳優さんたちとの作品づくりにおいても鍵となっているのでしょうか。その辺についても伺いたいと思います。
執筆や稽古の段階で特に意識されているポイントや、俳優とのコミュニケーションの工夫はありますか?
コミュニケーションの工夫というところでは、出演者から作品に対しての提案があれば、なるべくそれを採用するようにしています。集団創作の理想は10人いたら10倍以上の成果を得られることだと思っているのですが、大概そうはいかなくて。
そうなれるには全員が作品に対して前のめりになれなくてはならない。その為に、自分的には違うかもと思う提案でも採用します。全員が自分事として作品に関われていることによってナチュラルさが生まれているということもあるかと思います。
――客席で感じられるあの「いまここで起きているかのような感覚」の裏にはそのような演出、役者たちの努力があったんですね。全員が同じ方向を向いて作品作りに取り組める環境と作品をその場で変えていく柔軟さがより良い作品を生み出しているのだと感服したしました。
そのほかにも作品づくりに欠かせない場所(会場)についても伺ってまいりましょう。
屋上カフェ「ムリウイ」や元銭湯の「BUoY」など、特殊な会場での上演が印象的です。
公演を行う場所にこだわりなどはありますか?
ウンゲツィーファの創作テーマとして「現実からの脱出」を掲げていて、日常の世界から半歩はみ出した場所を意識しています。いわゆる演劇をやる場所ではなく、街の中に不意にある場所から物語の世界に入る。現実からからずれ込んでいく、という体験をお客さんにして欲しいと考えています。
そういうことを意識して場所選びをしたり世界観を作り上げています。「BUoY」は東京のオルタナティヴ・スペースの代表格のようなイメージがあって。いつかやらせて頂きたいと願っていました。
――人が「生きていた」施設を使うことによって劇空間をより現実に近づいたものにする。こんなところからもウンゲツィーファさんの作品の魅力が生まれていたのですね。
その他に、印象に残っている会場などはありますか?
目と鼻の先にお客さんがいる状況で、僕は押し入れの中で音響等のオペレーションをしていました。その時のお客さんの目線がすごく印象的で、俳優の一挙手一投足を凝視する人もいれば、気まずくてずっと中空をみている人もいて。改めて客席と舞台の境目の不確かさを考えるきっかけになりました。それって演劇そのものの不確かさとも言えます。
――六畳に…10人ですか!?
それは演劇というよりちょっとした「事件」ですね(笑)
劇空間へのこだわりはある種、実験的で「演劇」というものが持つ可能性に対する挑戦であるようにも感じますね。
次回公演の『8hのメビウス』深化版について深堀りしていきたいと思うのですが、今回はここまで!
後編のインタビューでは、再演となる『8hのメビウス』深化版について詳しくお話を伺ってまいります。後編もぜひお楽しみに!!


